第二部
第二章 〜対連合軍〜
百一 〜運命の使者〜
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み進めながら、思わず苦笑が浮かぶ。
だが、文そのものには不審なところは見当たらぬようだ。
「禀。読んでみよ」
「はい」
時折首を傾げながらも、表情を変える事なく読んでいる。
……そして、書状の末尾で視線を止めた。
そして、顔を近づけて何やら確かめているようだ。
「禀殿。何かありましたかな?」
「ええ。歳三様、ねね、これをご覧下さい」
私達が覗き込んでから、禀は書状の一点を指し示した。
「これは、陛下の璽ですな」
「そうです。……此所が、引っかかるのです」
「むー。ねねにはさっぱりなのです」
璽……待てよ。
「禀。璽とは、伝国璽の事か?」
「そうです。璽は陛下専用の印、つまり伝国璽です」
「そうか。……その璽が、偽物である疑いを持ったのであろう?」
我が意を得たりとばかりに、大きく頷く禀。
「流石ですね、歳三様」
「な、何ですと!」
ねねの驚きは素のようだが、程普は黙って此方を見ている。
「しかし、璽を偽造して勅書を出すとは……。流石に盲点でした」
「いや、単に偽造した訳ではないやも知れぬ」
「どういう事ですか、歳三様?」
「うむ……」
確かめておくか、やはり。
「程普。この事、白蓮の他に気づいた者は?」
「いえ、今のところは。勿論、気づいていても口に出来る事ではありませんが」
「……わかった。白蓮の投降、受けると致す」
ホッと胸をなで下ろす程普。
「ありがとうございます。早速、我が主に」
「いや、待て。お前は此所に残るが良い、別の者を使いにやらせる」
「はっ。……土方様」
「何か?」
「……いえ。失礼しました」
程普は何かを言いかけたが、改めて口にする事はなかった。
更に数日後。
連合軍はシ水関を越え、漸く移動を始めたとの報告が入った。
「白蓮。もう動けるか?」
「ああ、済まんな。十分休んだし、私も兵も大丈夫だ」
白蓮だけでなく、程普、そして韓当も共に指揮所に顔を揃えていた。
「それで歳三。例の件は?」
「うむ。間もなく戻るであろう」
「……そっか」
「主! 只今戻りましたぞ!」
肩で息を切らせながら、星が飛び込んできた。
「済まぬな」
「何の。……これでござるな?」
星が懐から取り出した、錦の袋。
その中には、金銀で装飾された印章が収められていた。
「禀、程普。どうか?」
「……これですね」
「……間違いありません。本物の、伝国璽です」
「……そうか。星、何処にあった?」
「は。主が仰せの通り、市中の古井戸の底に」
恐らく、張譲が逃げ出す際の混乱によるものだな。
そして、長安で此がない事に気づき、急遽模
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