第二部
第二章 〜対連合軍〜
百一 〜運命の使者〜
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うで何よりなのです」
「久闊を詫びるのはそのぐらいに致せ。さて、程普」
「はい」
程普は居住まいを正し、私を見据えた。
うむ、良い眼をしている。
「既に陳宮様を通じて申し上げている通り、我が主公孫賛は、貴方様への帰順を望んでおります」
「私にか」
「そうです。我が主より、土方様との経緯は聞き及んでおります。土方様にも、決して悪い話ではないかと存じますが」
程普の言う通りではある。
白蓮は将としてだけではなく、文官としてもなかなかに有能だ。
それに、率いる騎兵隊の精強さは彩らも認めるところだ。
「だが、解せぬのは何故この時期にという事だ。未だ、勅命は有効であろう?」
「……その事ですが」
と、程普は声を潜める。
「勅書は偽造されたものではないかという噂があります」
「ほう」
禀は、しきりに眼鏡を直している。
どうやら、程普の話に興味を抱いているようだ。
「では、連合軍はありもしない勅令に基づき、無実の我らを討伐しようとしている……となるな」
「噂が真なら、その通りでしょう。無論、噂に過ぎない事ですが」
「程普殿。貴殿の口調だと、公孫賛殿はその噂を真実と思って動こうとされている……そう受け取れますが?」
禀の指摘に、程普は首肯する。
「もともと我が主は、土方様が朝敵と名指しされた事に対して不審の念を抱いておりました。ただ、勅書の真偽など、確かめる術もありませんでした」
「そのうちに、袁術からの参戦催促が届いて、断り切れずに……という事か」
「はい。あの状況では、様子を見る事は即ち朝敵を意味しましたから。……我が主の戦力で、それに対抗するのは無謀という他ありませんから」
「ですが、今なさろうとしている事はまさに陛下への反逆との誹りを受けましょう」
「……これを、ご覧いただけますか?」
程普は、懐から書状を取り出した。
竹簡ではなく、紙である。
「袁術様の元に届いた、勅書です」
「な、なんですと!」
「本物ですか?」
ねねと禀も、流石に驚きを隠せぬようだ。
いや、私自身も内心ではそうだが。
「何故、お前がこれを?」
「……申し訳ありませんが、入手方法はお答え出来ません。ただし、本物である事は請け負います」
「見て良いのだな?」
「ええ、勿論です」
程普から勅書を受け取り、押し頂いてから開く。
偽物やも知れぬ、という事があったとしても、現時点では確たる証拠もない。
よもやとは思うが、程普の謀やも知れぬ以上は慎重にならざるを得ない。
開封し、視線を走らせた。
内容は確かめるまでもない、私と月の悪行が書き並べられている。
大凡は聞き及んでいたが、良くも此所まででっち上げられるものだ。
読
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