第肆話「ジョーカー」
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開始の合図から10分ほど経過した後、俺は着々と障害物を乗り越え進んでいた。
道の途中に炎が噴き出したり、壁や柱、天井が崩壊したりと障害物が多数あった。道こそ入り組んでいるものの、どれも予想の範疇を出なかった。
……が、あれは流石にズルいだろ。
競技開始の合図の直後、新人消防官達は一斉にスタートした。
ところが、その中に1人とんでもないやつがいた。
俺の親友、森羅日下部である。
第三世代能力者である彼の能力は、両足から炎を噴射することであり、空を飛ぶことが出来る。
つまり……
『ヒーローはいつだって、空から登場だぜ』
一人だけ空飛んで障害物を全部避け、一足お先に上の階へと到達しやがったよあの野郎!!
ルール違反ではないが、大会の趣旨に沿っているかと言われると……いや、でも現場で厄介な障害物を無視して要救助者の元へと辿り着けるのは、消防官として見ればとても理に適ってるし……。
うーむ……腑に落ちないけど文句の付けようはないな……。
だが、俺だって負けられない。
今のところ、他の消防官達を追い抜いてトップを独走しているのは俺だ。
このまま進めば、森羅はすぐに見えてくるだろう。
──その時、空気が揺れた。
(ッ!?爆発音!?)
断続的に音が反響し、壁が振動する。
これも訓練……なのか?いや、何かおかしいような……。
音の聞こえた方向へと足を進める。
一歩進む毎に嫌な気配がひしひしと肌に伝わってくる。
あくまで直感だが、日常的に不幸に苛まれている俺のカンはよく当たるんだ。
それも、危険察知に関してなら人一倍だと自負している。危機回避までは難しいのが難点だけど。
ともかく、この先に何らかの危険が存在するのは間違いない。
それが何なのか、確かめなければ……。
……とその時、右側の壁が綺麗な三角形にくり抜かれた。
「なんだ!?」
思わず構える俺は目を凝らす。
壁をくり抜いて出てきたのは……
「む……なんだ、カヴァスか」
バカ騎士もとい訓練校の同期、アーサー・ボイルだった。
「なんだ、アーサーか……。お前、その呼び方やめろって言ってるだろ。俺にはちゃんと狛司って名前があるんだ」
「フッ……」
「いや、フッ……じゃないだろ!?」
アーサーは基本的に他人を名前で呼ばない。
万年厨二病のアーサーは自らを騎士王と名乗り、先輩方や教官達にさえタメ口かつデカい態度を取るくらいの馬鹿だ。
能力は高温のプラズマで剣を形成するというものであり、普段持ち歩いている十字架型の柄だけの剣には「エクスカリバー」と名付けている。
そんなアーサーから俺が付けられたあだ名こそ、「カヴァス」である。
アーサー王お気に入りの猟犬の
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