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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第58話 エル=ファシル星域会戦 その2
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沸き起こる白色の恒星の数は圧倒的だった。四つの独立部隊は後退を止め、帝国艦隊の側面を削り取るように砲撃しながら高速で前進。第四四高速機動集団は三本の錐となって砲火を真正面に向けつつ傲然と前進。その輝きはいつか前世の自然科学番組で見たシンカイウリクラゲのように見える。

「すごい」
 俺が背中を預けている壁の右斜め後ろ、エレベータの出入口付近から小さな感嘆の声が聞こえた。振り向くとそこにはブライトウェル嬢が、お盆の上に六個の紙コップを乗せたまま立っている。俺の視線に気が付いたのか、盆の耳を両手にしたまま、若干引き攣った笑顔で応えた。
「これが少佐の立てた作戦の結果なんですね」
「違う」
「え、ですが……」
「司令官の戦闘指揮が作り上げたんだ。作戦以上の戦果を。つくづく思い知らされた」

 爺様が俺の作戦に付け加えたのは前進と後退の指示だけではない。こちらの意図を敵に悟られさせず、さらに敵を喜ばせるように引きずり込み、一網打尽にしてしまう。調理方法通り料理ができるなら、料理店に人間のコックはいらない。料理を料理足らしめているのは、人間の腕なのだ。実質初陣の俺には、これから積み重ねていかねばならないものだ。

「俺もまだまだ勉強が必要だなぁ」
 俺がそう言ってお盆の上から紙コップの一つを取ると、一気にその中身を呷った。だがそこに入っていたのはアツアツのコーヒーであって……
「少佐!」
 思いっきりむせた俺は、ブライトウェル嬢に背中を叩かれ……司令部全員から呆れ半分面白半分の視線の集中砲火を浴びるのだった。


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