第三章 リベン珠
第7話 今日はここまで
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想郷の一大事だって事は私も分かっていますから、節度はわきまえますよ」
そう言う早苗の表情は真剣そのもので、普段の猛然と勇美に迫る様子はそこには存在していなかったのである。
「……」
この様相に、勇美もここは信用してもいいかと思ったのである。
そう勇美が思う中、早苗は言って来た。
「それで勇美さんに鈴仙さん。今日寝る所はどうするのですか? 今回の異変は月から発生しているから、一日ではそこまで辿り着く事は出来ないでしょう」
その早苗の言葉は誠実そのものであり、彼女の気遣いに勇美も嬉しく思うのであった。そんな早苗に対して勇美は返す。
「早苗さん、お気遣いありがとうございます。でもご心配には及びませんよ、ちゃんと野宿の為の準備は用意して来ていますから」
「そういう事ですよ、お師匠様の技術で作られていますから、その性能は折り紙付きってものですよ」
鈴仙も勇美の主張に相槌を打つのであった。普段振り回されているが、こういう時に永琳は頼りになる事は彼女はよく分かっているのだ。
二人の主張に抜かりはない。だが、ここまでの話を聞いた早苗の様子は急変したのである。
「の、野宿ですかぁ!?」
「うわっ!?」
突然声を張り上げた早苗に、勇美はびっくりしてしまったようだ。
「な、何ですか早苗さん?」
「野宿なんていけませんよお二人とも! 私がいる限りそんな事はさせませんよ!」
豹変しながらそう言う早苗。その様子に呆気に取られながらも勇美は言葉を返す。
「でも早苗さん。月に行く為にはそうでもしないと辿り着けはしない事、あなたも分かっていますよね?」
そう、それは早苗自身が言った事でもある。だから、勇美は理解してくれるだろうと踏んでの発言であった。
だが、次に早苗が用意した言葉は意外なものだった。
「簡単な事です。──私の所に泊まればいいんですよ♪」
「はえっ?」
その提案に勇美は意表を突かれたようだ。
「でもいいんですか? ご迷惑にはならないですか?」
当然勇美はその事を気にするのである。自分達は突然の来客となるのだ。予定にない事であるが故にわずらわせてしまうだろう。
「大丈夫ですよ。神奈子様も守山様も快く迎えてくれるでしょう」
何せ二人は神様ですからと早苗はつけ加えた。それ故におおらかで懐が広いのだと。
「それに何より私がお二人を歓迎しているんですよ」
そうである。これは早苗の心意気なのだ。だから寧ろ断る方が失礼というものだろう。
そこまで想い至った勇美の答えは決まっていた。
「それではお世話になります、早苗さん」
「私からもよろしくお願いしますね」
ここに二人の意見は固まったようである。
「はい、お客様は丁重におもてなししますよ」
対して早苗はにっこりと爽やかな笑みを携えて二人を迎え
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