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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第57話 エル=ファシル星域会戦 その1
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れたのは余談である。





 日を跨いで四月二一日〇三〇〇時。エル=ファシル攻略部隊は、全艦に第二級臨戦態勢を通達する。それと同時に、単縦陣から横隊陣へと陣形を変更した。中央に第四四高速機動集団。右翼にアップルトン准将の第三四九独立機動部隊とダウンズ准将の第四〇九広域巡察部隊。左翼にモリエート准将の第三五一独立機動部隊とメンディエタ准将の第五四四独立部隊。それぞれが横に長い長方体の陣形を上下に形成している。ただし中央の第四四高速機動集団のみ円錐陣を三つ、それも中央部隊をやや後方に下げて、配置している。

 一方でエル=ファシルを『防衛』する帝国側にも動きはあった。

 流石に同盟軍接近は理解したようで、今更ながらに四方八方に強行偵察艇を発進させて索敵に勤めていたが、その一部が第八七〇九哨戒隊の各艦と触接した。しかし強行偵察艇はその速度と機動性と小型さが持ち味であり、哨戒隊の各艦とは艦自体の戦闘能力に大きな差がある。哨戒機能をパッシブのみにして待ち構えていた彼らは、単独航行する強行偵察艇をハエのように叩き落としていった。

 その被害の大きさに驚いたのかどうかはわからないが、彼らは方形陣を形成し防御態勢を整えるとともに、増援の要請を行っているように思われた。内容までは不明だが超光速通信の飛躍的な増大が各所より報告されていることからもそれを疑う余地はない。

 故に爺様が選択すべきはただ一つ。艦隊を急進させて数的優位の内に帝国軍を心理的に追い込み壊滅させることである。そして爺様はその通りにした。〇四一五時、既に双方の艦隊がお互いの戦力をお互いの探知装置で確認する距離に至り、惑星エル=ファシルの惑星軌道上、同盟時代D三宙域と呼ばれた宙域にて砲火が交わされた。

「撃て!」

 爺様の老人とは思えぬ鋭い指示の下、最初に戦艦エル・トレメンドが砲門を開き、次に直属部隊、第四四高速機動集団、そして攻略部隊全艦と順次ビームを吐き出していく。一方で帝国艦隊もただ撃たれっぱなしでいるわけではない。彼らの砲門もこちらを指向しており、エネルギーの刃でこちらを?み千切ろうと反撃してくる。

 ケリムやマーロヴィアで海賊を相手にしていた時とは文字通り桁違いのエネルギーが宙域に充満し、幸運にも命中しなかったビームによってそれが不安定性を増していく。そしてそこにエネルギー中和磁場を突き抜け、さらには物理装甲を引き裂き核融合炉に達した瞬間、不運な艦は秒よりも短い短命の恒星を化す。その恒星が生み出す一瞬の高エネルギーが引き金となり、本来は真空で伝播することのないはずの宇宙空間に振動をもたらす。

 戦艦エル・トレメンドのメインスクリーンには敵と味方が生み出す無数の恒星が煌めいている。その度にメインスクリーンの左上に映し出されている数字が大きくな
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