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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第56話 冥界訓練便り、そして
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間が、複数で操艦しない限りまずありえない。

 一方で小戦隊集合砲撃訓練はそうはいかない。人工知能に火力管制を任せればそれこそ一瞬で『人工知能が発狂して』砲撃できなくなるか、味方撃ちをしてしまう。近接防御のような明確な範囲を決めて対応するという限定即応を求められる分野は人工知能の得意分野だが、それ以外の分野では圧倒的にマニュアルの方が運用に易い。その中でも爺様などは『砲撃の神様』とも言える腕の持ち主だった。

 そんなマニュアルな世界である砲撃にあって、一番の基礎訓練は艦を静止させての対静止目標砲撃。その次が一定運動下における対静止目標砲撃になる。相手は動かないがこちらは動く。ただし一定の決められたルールに従った等速運動だ。各砲座の管制装置を艦の運動制御に連動させ、後は動かない目標に照準を合わせて引き金を引くだけ。複雑な機動を含む砲撃回避運動もなければ、別部隊が射線に入ってくることもない。電磁波やエネルギー潮流も重力特異点もない安定した訓練宙域にもかかわらず……何故か外れる。

「原因はあるじゃろう。人間よりも機械の故障じゃな。連動照準装置のズレが一番考えやすい。後は砲身にあるビーム収束装置の芯ズレというのも多い」

 他にも原因があるだろうが、潰すべき箇所は潰すべきだろう。そこにこそこの訓練の意味がある。より高度により複雑な動きが出来たとしても、自分の持つ武器が信用に足るモノでなければ何の意味もない。そこに気が付いている指揮官達はここに怒鳴り込む時間を惜しみ、指揮下の、特に標的を外した艦の砲撃設備の再チェックや艦長・副長レベルでの自主検討会を開いて翌日の訓練に備えている。堪らないのは査閲部のメンバーだろう。怒りの矛先は回避できても仕事量は増えるばかりなのだから。

 だから五日目の訓練終了時刻間際。速報値であっても集合砲撃訓練で満点が出たという話が全部隊に流れた時、ほとんどの将兵が安堵した。これで次に進めるだろう。その英雄的な結果を出してくれた部隊はどの部隊だと調べ、結果を見て多くの将兵はなんとも言えない悔しさをにじませた。

 その部隊の名は第四四高速機動集団所属の第八七〇九哨戒隊というのだった。





 六日目の朝。第八七〇九哨戒隊が満点を出したという結果が査閲部から正式に全部隊に送られると、各部隊の訓練に対する意気込みが明らかに変わった。確かに同哨戒隊の規模は小戦隊というより、その下の組織単位である隊に過ぎない。だが司令部直属麾下の独立した戦隊として運用されており、艦の種類も戦艦から駆逐艦までと幅が広い。有効射程も異なるが、訓練評価の場合は艦種に関係なく統一されている以上、不公平と声を挙げるわけにはいかない。

 まして第八七〇九哨戒隊はエル=ファシルから民間人を捨てて逃げだした奴らで、その恥知らずの生き
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