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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第56話 冥界訓練便り、そして
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ん」
「そんなことをしていたらいつまで経っても訓練は進まない」
「意味があるから訓練は実施するのです。意味のない訓練など行いません。基礎が確実にできない部隊がいくら高度な戦術訓練したところで、烏合の衆は烏合の衆です」
「貴様ぁ!」
「やめんか!!」

 大佐の左手が俺の胸倉を包み、右拳が肩より高くなった瞬間、司令部に叱責が飛ぶ。当然、その声の主は爺様だった。

「ボロディン少佐、貴官の言いようは歴戦の指揮官である上官に対して節度ある物言いではない。すぐに大佐に謝罪せよ」
 爺様の激怒(のように見える)に、大佐は俺の胸から手を離したので、俺は厭味ったらしくジャケットを整えると大佐に対して深く腰を折って頭を下げる。それを見たのか、爺様は腰に手を廻して大佐に言う。
「大佐。この生意気な孺子は口が悪くての。頭は悪くないがつい滑ったことを言う。どうか許してやってくれ」
「は、はぁ」
「歴戦の貴官に言うのは釈迦に説法だとは思うが、基礎訓練とは文字通り他の訓練の礎となるものなんじゃ。そこのところを貴官から貴官の部下達によくよく説いてやってほしい」

 歴戦と言えばこの艦隊の中で爺様に勝る戦歴を持つ軍人はいない。その爺様に『歴戦の』と言われては引き下がらないわけにもいかない。大佐は俺をひと睨みしただけで、爺様に敬礼すると司令部を出ていく。大佐の姿が扉の向こうに消えてから三〇秒後。爺様は音を立てて司令官用のシートに腰を下ろした。

「で、ジュニア。この三文芝居にはもういい加減飽きたんじゃが、いつまで続くんじゃ?」

 通算一〇回目となる討ち入りに心底から呆れていると言わんばかりの爺様は俺に舌を出しながら問うた。三回目迄、演技とわかっててもハラハラしていたファイフェルは、今では出ていくと同時に宇宙艦隊司令部からのデータを取り纏め始めているし、四回目で耳が慣れたブライトウェル嬢は爺様の為にハーブティーを淹れて給湯室で待機していた。

「小戦隊移動砲撃訓練で、満点の部隊が出るまでです」
「あの大佐の言ではないが、本当にこの訓練だけで予定の一〇日を使い切ることにならんかね?」
「最悪そうなることも想定しておりますが、正直なところこのレベルで今日まで満点を出す部隊が一つも出ないとは思ってもいませんでした」
「動かない的に向かって、一定運動しながら砲撃しているのに、どうして外れるのか、か」

 例えば小戦隊戦列基礎訓練などは、搭載している人工知能に操艦の全てを任せてしまえば、人間に分かるような誤差など生じさせることなく満点を叩き出すことができる。勿論人工知能に操艦を任せるなどという非人道的な上級指揮官などいないので、あくまでもマニュアル、あくまでも人の手による操艦が行われるし、誤差は出てくる。満点が出ることは時差なしのテレパシーが使える人
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