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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第55話 出動
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射的に応えると、「そうかぁ!」と異様に喜んで俺の両肩をバンバンと叩いて小躍りして自分の席へと戻っていく。席で待っていた参謀達にどうやら俺が言ったことを吹聴しているのか、参謀達の呆れた視線がアップルトン自身だけでなく俺にも飛んでくる。付き合いきれんと俺が雛壇にある自分の席に向かうとそのタイミングで地上軍の幕僚達が会議室に入ってきたため、会場は一瞬緊張に包まれる。が、それも一瞬で、すぐに何事もなかったように各々会話を切り上げて、席へと戻っていく。

 宇宙戦部隊と地上戦部隊の見えない心の壁。それは宇宙艦隊司令長官と地上軍総監が本来は同格であるにもかかわらず、圧倒的に宇宙艦隊司令長官の方が軍内における権威が上であるということから始まっている。
 これはある意味やむを得ないのも事実だ。星間国家同士の戦争である以上、星域の、星系の宙域支配権を争奪することが中心であり、惑星の軌道上を制圧することが出来れば、地上戦ですら軌道上からの極低周波ミサイルの絨毯爆撃で悉く地上構造物を粉砕することで終結させることができる。

 それが容易にできない要塞や前進基地などの対軌道防御施設がある場所であり、あるいは有人惑星などの民間人がいて軌道上からの攻撃が極めて困難な場所こそが、地上戦の主戦場となる。宇宙戦部隊が星域に進入し、星系の制宙権を確保することがまず先決となり、それが終わってからでないと地上戦部隊の出番はない。何しろいくら人間がいても、人間単体では超光速移動はできないのだから。

 故に「御膳立てしなければ何もしないごく潰し」という悪口と「まともに棒も振れない軍人モドキ」という悪口は、自由惑星同盟軍の組織が確立して以来、綿々と受け継がれるものだった。もっとも面と向かって言い合うことはあまりない。少なくとも重力の支配権の或るところで、地上戦部隊将兵に拳で勝つことはなかなかに難しいからだ。

 今回の作戦でも作戦の主眼はエル=ファシル星系の制宙権を帝国から奪取することが主目標であり、民間人がエル=ファシルの英雄によって悉く後方に送り出された以上、現在惑星エル=ファシルの住人は帝国側が連れてきた人間しかいない。地上戦部隊のお仕事は軌道砲撃で打ち漏らした帝国軍地上部隊の掃討と、もしかしたら在留しているかもしれない帝国方民間人の『解放』だ。その事もわかっているだけに地上軍司令部も僅か二個師団、それも歩兵中心の師団を送り込んできている。むしろ大気圏戦隊や工兵連隊を準備してくれるだけ、この作戦に対して『悪意は抱いていない』という証左かもしれない。

 そんな地上軍の面々が席に座り、会議室の全ての準備が整うと作戦全体の参謀長を兼務するモンシャルマン参謀長が司会者として会議の口火を切った。

「既に諸氏も了解射ていると思うが、この場に集結した我々は本年四月一五日を期して帝
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