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少年は勇者達の未来の為に。
鷲尾須美は勇者である 再臨の章
プロローグ
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父と母の顔がみるみるうちに青ざめていくのがわかった。そんな両親の顔を見て不安になったのか、風と樹はすぐ隣にいる蓮の手を握りしめ、蓮は二人の頭を撫で、安心させようとしていた。

両親はすぐに玄関へ向かい、大赦の者を家に上げた。ソファに座っていた三人を呼び、座布団が人数分敷かれた居間に座った。いきなり来た宮司のような格好をした怪しい人物に三人は警戒心全開だった。そんな中父は使者と会話を始めた。

「それで、大赦がなぜ・・・お役目、とのことでしたが。」

「はい・・・神樹様から神託が降りました。そちらのご子息、犬吠埼 蓮様に“勇者”の適正、及び“聖剣”様に選ばれた。と」

「蓮が・・・勇者・・・? バカな!勇者は無垢な少女だけのハズでは!? いや、それ以前に勇者を輩出するのは大赦でも伝統ある家からしかできないはずだ!!」

「なぜ男性であるご子息が神樹様に選ばれたのかは我々でも理解出来ておりません。そして勇者輩出についてはご存知の通り・・・その為、ご子息には大赦の伝統ある家柄の1つ、白鳥家へと養子に出てもらうことが決まりました」

「しかも聖剣ですって!?あの剣は今まで誰も動かすことすら出来なかった物でしょう!。その剣が蓮を選んだと!?」

「ありえない事かと思いますが事実なのです。神託では『彼以外にこの(つるぎ)を持てる者はおらぬ』と・・・」

三姉弟は父と使者の話を恐らく半分も理解できていなかっただろう。それでも何か良くないことが起きようとしているのは理解していたし、それが蓮に降りかかろうとしているのも分かった。風は蓮の左手を握りながら使者を睨み付け、樹は蓮の右手を両手でしっかり握りながら静かに泣き、蓮は二人を必死になだめようとしていた。

「勝手な・・・あまりに勝手すぎる・・・!勇者に選ばれたから養子に出せだと・・・!?納得できるわけないでしょうっ!」

「それでも納得して貰わねばなりません。あなた方もお役目の重要性と必要性が理解出来ているハズ。神樹様の為、何よりもこの世界の為、ご子息の力が必要です。勇者になって貰わねばならないのです」

使者は声色を変えずに淡々と話す。
大赦で働く者として神託がどれ程重要な事か、よく知っている。それでも納得など出来なかった。
夫婦の視線が後ろにいる子供達へと向いた。風はいまだ風は蓮の左手を握りながら使者を睨み付けていた。樹は怯えているのか、蓮にしがみつき震えていた。そして肝心の蓮は、不安そうな目で両親と姉妹を見ていた。
両親が視線を下に下げた。何故この子なのか、何故死ぬかもしれないお役目にこの子がつかねばならぬのか、何故、何故、何故ーーーー


神樹様はまた(・・)この子を家族と引き離すのか。とーーーー



勿論、出来る事なら断りたい。だが出来ないのだ
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