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Fate/WizarDragonknight
あたしってほんとバカ
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ゃない?」

 さやかは天井を指さした。

「ほら。あたしと事を構えるのは、そのあとゆっくりやろうよ。それじゃ、またね!」

 そのままさやかは手を振りながら体重を移動し、窓からその姿を消した。
 無意識に窓際へ急いだハルトだったが、もうどこにも彼女の姿は見えなかった。

「……」

 ハルトは深呼吸した。雨の空気が肺を満たし、静かに吐き出す。

『思ったより感傷的にはなっていないようだね』

 病室から、キュゥべえの声が聞こえてきた。

『人を救えずに、ファントムにしてしまったというのに。こういう時人間は、意味もなく嘆くんだろう?』
「……ああ。そうだな」
『君はしないのかい?』

 ハルトは静かに病室を振り返る。バラアマゾン___恭介の遺体の上で、キュゥべえが、魔女が落としたらしき黒い小物を放り投げていた。背中に開いた口よりそれを摂取する光景は、とても不気味だった。

「俺は救える人は救うけど、手遅れだった人は諦める。都合のいいように聞こえるかもしれないけど、俺が泣いている間に、誰かが傷つくことだってある。さやかちゃんのことは、また探すけど、今は……」
『バーサーカーを止めるのかい?』

 キュゥべえの問いに、ハルトは頷いた。

『ふうん。まあいいさ。君の言った通り、今日は副業に専念するとしようか。幸いここには、僕が見出したマスターが二人もいるからね』
「二人?」
『君と。バーサーカーのマスターさ』
「千翼くんのマスター……でも……」

 クトリには、令呪はなかった。他の誰かが、千翼のマスターということだ。
 ハルトは恭介に手を合わせ、すぐに病室を飛び出そうとした。ドアノブに手をかけたところで、足を止める。

「なあ。キュゥべえ。一つだけ聞かせてくれ」
『何だい?』
「さっきのあの怪物……魔女……だったっけ?」
『うん』
「お前の魔法少女の勧誘のために……お前が呼んだんじゃないの?」
『それは今、必要な情報かい?』

 ハルトは首を動かさず、横目でキュウべえを睨む。無表情のキュゥべえは、澄ました無表情でじっとハルトを見返していた。

『急いだほうがいいのに。どうして君たちは、優先事項よりも、細かい些細な情報を気にするのか。全く訳が分からないよ』
「……肯定って受け取っていいのか?」
『君がそう望むのなら。ね』

 ハルトは出ていくとき、力を込めてドアを閉めた。バンと音を立てたドアは、反動で少しだけ開く。
 その間、キュゥべえはじっと、病室の入り口を見つめていた。
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