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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第54話 友人
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「え、まさかこの黒髪の美人さんがあの時の肩車したイロナちゃん? マジで?」
 イロナを指差しながら近づくアッテンボローに、俺はすかさず右腕でイロナを手前に引き寄せると、返す左腕を伸ばし人差し指で強くアッテンボローの額をはじく。「アイタァァ」と悲鳴を上げて額に手を当て、芝生に蹲るアッテンボローを横目に、ヤンは呆れ顔で肩を竦めるとイロナに右手を伸ばした。

「三年ぶりですね、お久しぶりです。ミス=ボロディン」
「お久しぶりです。ヤン少佐。エル=ファシルでのご活躍、びっくりしました」
「別に大したことをしたわけじゃないんですけどねぇ」
「エル=ファシルに行ったフレデリカ先輩の命を助けてくれたんです。本当にありがとうございました」
 握手の後、腰を九〇度に曲げ深く頭を下げるイロナに代わって、フレデリカとイロナの関係を俺が簡単に説明すると、ヤンの顔から困惑と迷惑の成分が少しずつ抜けていくのが分かった。

「英雄と言われるのは性に合わないか」
 アッテンボローの歯が浮くような賛辞と、それを牽制するかのようなウィッティのイロナに対するフォローを眺めつつ、俺はぼんやりとした表情で横に立つヤンに囁くように言った。掻い摘んで聞くにエル=ファシルから戻り、ブルース=アッシュビーの謀殺説を調査し、惑星エコニアの捕虜収容所の参事官をたった二週間務めていた。その間にアルフレット=ローザスとクリストフ=フォン=ケーフェンヒラーを見送って、現在は第八艦隊司令部作戦課に勤務している。
 原作通りの人生を送っているヤンに改めて聞くまでもないとは思うが、俺は敢えて口にした。そしてその返答もまた予想通りだった。
「英雄なんてものは酒場にはいっぱいいて歯医者の治療台にはいない程度のものでしょう?」
「俺もそう思う。だが他人がどう言おうと、お前はよくやった」
「運が良かっただけです」
「そうだな。そうかもしれない。だが運を掴みきるために最大限努力はしただろう? エル=ファシルで」
「そうですね……そういう意味でボロディン先輩には感謝してます」
「なんでまた」
「『好き嫌いで逃げることなく、なるべく手を抜かずに努力せよ』 おかげさまで一生分の勤勉さをあの地で使い果たしましたよ」

 別に俺がそんなことを言わなくても、きっとお前は充分職務を果たしただろうと言おうとしたが、肩を竦めるヤンを見て俺は口を閉ざした。そのタイミングを見計らっていたのか、結婚式の主役の一人が俺とヤンのところにやってくる。最初にケーフェンヒラーが残した資料がB級重要事項に指定されたこと、ヤンの名前で出せば公表できることを話した。その内容について知っていても知らないふりをするのは苦労したが、すぐにキャゼルヌはヤンから俺に視線を移して言った。

「年齢から言えば次はお前さんの番だと思うが、そ
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