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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第53話 揺籠期は終わった
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ーン攻略の付属作戦ということで少なくとも敵戦力がこちらよりも大幅に多い場合は、撤退を視野に入れてもいいという心理的余裕がある。なれば司令官の指揮能力を確実にこなせる戦力を整備し、その上で各層の指揮官達が不満を持ち、より高度に挑戦しようとする意欲を持たせなくてはならない。納得した上で作成した訓練計画だ。俺は睨みつける爺様の瞳をまっすぐに見返した。

「よかろう。訓練の基準はこれで行く」
 爺様の決断に、俺は敬礼ではなく頭を下げて応えた。爺様がいずれ第五艦隊司令官となる時、この第四四高速機動集団が基幹部隊となるかはわからない。だがそうなってもおかしくないように整備すべきなのだ。
「それと貴官が提出していた有給休暇の件じゃが、作戦案が間に合うようであるなら許可する。だいぶジュニアには甘いかもしれんが、他の若い連中と羽を伸ばしてくるといい」
「ありがとうございます」
「なに、当日はファイフェルに代わりをやらせるからの」
 腕を組んでウンウンと頷く爺様と、無表情の顔と対照的な含み笑いの目のモンシャルマン参謀長と……爺様から見えていないことをいいことにムチャクチャ渋い顔をしているファイフェルに対して、俺は完璧な敬礼で応えるのだった。

 そして上司からの承認が得られれば、あとは量が多いだけのルーチンワークだ。フィッシャー師匠直伝の訓練査閲マニュアル(無断作成)という『チート』があるから、抑えるべき査閲側のチェック点と手続きに問題はない。これを第四四高速機動集団の各組織レベルに落とし込んでいく。ほぼ均等に割り振ったので、独立部隊三、戦隊は一五、小隊は八〇、分隊は四〇〇弱。第三艦隊の規模に比べればはるかに小さい。それでもフィッシャー班の実施した査閲規模の半分になり、一〇人でやっていた仕事を一人でこなさねばならなくなった。

 徹夜につぐ徹夜。並行してモンシャルマン参謀長と共にエル・ファシル解放作戦の作戦骨子を検討する必要もあり、モンティージャ・カステル両中佐と共に宇宙艦隊司令部のオフィスから何度も朝焼けを見たことか。司令部の一番の下っ端はファイフェルだが、彼は爺様の副官でもあるので爺様が司令部を下がれば彼も帰宅する。必然的に、俺が徹夜組の夜食や軽食の準備をすることになる。

 何度目かの徹夜明けの朝。司令部のキッチン冷蔵庫に残して置いた艦隊乗組員用戦闘糧食(放出品)を朝食代わりに温めつつ髭を剃っていると、軍属姿のブライトウェル嬢が両手に大きな袋を抱えてキッチンに入ってきた。こちらはヨレヨレのシャツに皺の寄ったスラックス。一方の彼女はショーケースから出てきたと言わんばかりにぴっしりとアイロンのかかった上下に身を包んでいる。

「……やぁ、おはよう」
「……おはようございます。ボロディン少佐殿」
 なんとも気まずい遭遇に、気の利いた言葉を口に出
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