第四章
[8]前話
「全然」
「けれど皆言うけれど」
「それは皆のイメージで」
「実際の本渡さんは」
「私は私だから」
あくまでというのだ。
「それでよ」
「そう言うんだ」
「ええ」
静かで落ち着いた口調で話した。
「恋愛もね」
「するんだ、何かね」
榊原は寅子のその言葉を聞いて言った。
「聖女っていうのは」
「イメージ、言うなら仮面かしら」
こうも言うのだった。
「私は」
「そうなんだ」
「そう、それは」
まさにというのだ。
「皆が私が被っている様に見ていた」
「そうだったんだ」
「けれど私は仮面を被っているつもりもなくて」
「そのままだったんだ」
「その顔は」
本当にというのだ。
「ありのままだから」
「そうだったの」
「そう、だから」
それでというのだ。
「今も榊原君と」
「付き合っているっていうんだ」
「ありのまま」
まさにというのだ。
「そうしているの」
「そうなんだ」
「そう、それでだけれど」
微笑んでだ、寅子は榊原に言った。
「これからも私と一緒にいてくれるかしら」
「というか今も思ってるよ」
榊原は寅子に戸惑いつつも真剣さに満ちた顔で返した。
「これからもね」
「一緒にいてくれるのね」
「僕のでいいのかって」
「そうなの」
「うん、じゃあね」
榊原は寅子にあらためて言った。
「これからもね」
「宜しくお願いするわ」
寅子は榊原に微笑んで応えた、そうして二人で交際を続けた。その時の寅子の顔は聖女のものではなく普通の少女のものだった。
聖女の仮面 完
2020・7・18
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ