第一章
[2]次話
聖女の仮面
本渡寅子は透き通る様な白い肌を持っている、髪の毛は地毛の銀髪で長く伸ばしている。目の色はアイスブルーである。
スウェーデン出身の祖母の血がそのまま隔世遺伝しての外見だ、やや面長で睫毛も眉毛も銀色で背は一四八程で華奢なスタイルだ。
成績優秀でもの静かで無口である。家はプロテスタントでいつも首には十字架があり神への信仰を忘れない。
そんな寅子を見て同じ高校、県内でも有数の進学校に通う彼等は言っていた。
「この世にいない感じだよな」
「色白で銀髪で目はライトブルーで」
「小柄で華奢で」
「しかも無口で」
「お人形さんみたいね」
こう言うのだった。
「しかもいつも十字架胸にあるし」
「神様へのお祈り欠かさないし」
「聖書にも詳しいし」
「シスターみたいな感じだよな」
「というか聖女?」
ここでこの言葉が出た。
「本当に」
「ああ、そんな感じだな」
「頭いいし」
「もの静かだし」
「無口だけど親切で優しいし」
「それじゃあな」
「聖女だよな、本渡さんって」
そうなるというのだ。
「冗談抜きで」
「外見も性格も」
「だよな、あんな娘実在するんだな」
「そのことも驚くな」
「そうだよな」
寅子を見て言う、名前は虎であったが兎角その外見と性格から聖女と呼ばれていた。だがその彼女がだ。
ある日家でこんなことを言った。
「若しかして」
「どうしたんだ?」
「何かあったの?」
「私好きになったかも知れない」
こう両親に言うのだった。
「男の人を」
「そうなのか」
「寅子もそうなったのね」
「同じクラスの榊原君」
その彼をというのだ、見れば父の淳一は黒髪に黒い瞳で日本人そのままだ、だが母は娘と同じ肌と髪の毛そして目の色である。
「榊原八幡君なの」
「その子はどうした子なの?」
母が娘に尋ねた。
「それで」
「背が高くて凄く頭がよくて」
そしてとだ、寅子はその彼のことを話した。
「何処か頼りない」
「そうした子なの」
「そう。好きになったら」
その時はとだ、寅子は母に応えて言った。
「どうしようかしら」
「そうなったらな」
父は考える顔になった娘に強い声で告げた。
「進むべきだ」
「進むの」
「本気で好きならだが」
この前提があるが、というのだ。
「それならな」
「進んでいって」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「交際するんだ、その交際もだ」
「進んでいけばいいの」
「そうだ、そしてだ」
「そして」
「結婚もな」
これもというのだ。
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