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人面猫から
第四章

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「どうぞお召し上がり下さい」
「おい、それコンビニのパンじゃねえか」
「いえ、これはマナです」
「どっからどう見てもそうだろ、っていうか世界救ってパン一個かよ」
「人は慎みを持たないといけません」
「勝負もチンケだったけれど褒美もチンケだな」
「では受け取らないと」
 天使は常盤に問うた。
「それではこのマナは私が」
「貰っておくよ、家に帰って牛乳と一緒に食うな」
「それでは」
「っていうかもう日が暮れるな」
 気付けばそんな時間だった、夕焼けはその暗さを増していてアスファルトは紫になっていてもうすぐ夜の黒が世界を覆おうとしていた。
「帰るか」
「では私も天界に帰って夕食を。今日は大好物のレバニラ炒めなので楽しみです」
「あたしも早く家に帰ってコロッケ食べるしーー」
「天使とか悪魔の食うものかよ」
 レバニラ炒めやコロッケがとだ、常盤は二人に突っ込みを入れた。
「ったくよ、何かしっくりこねえ勝負だったな」
「ではまた機会があればお会いしましょう」
「今度はだるまさん転んだにしよっか」
「出来ればあまり会いたくねえな」
 常盤は二人と別れながらこう言ってだった、家に帰った。そうして家に帰ると母親に怒った顔で言われた。
「遅いけれど何処行ってたのよ」
「公園で世界救ってた」
「何言ってるのよ」
「言ったままだよ、それで親父まだかよ」
「今日は遅くなるって連絡あったわ」
 母は息子にあっさりとした口調で答えた、家は団地の三階だった。母親は髪の毛はチリチリのパーマで太っていて細目である。
「一時間位ね」
「残業かよ」
「課長だから残業手当は出ないけれどね」
「出世もよし悪しだな、まあとにかく晩飯何だよ」
「玉紐生姜でたいたわ、あとけんちん汁もあるから」
「ああ、どっちもいいな」
「どっちもあんたもお父さんも好きだしね」
 それでというのだ。
「作ったのよ」
「そうか、じゃあすぐに食うな」
「食べたらお風呂入りなさい」
「風呂上がりにパン食っていいか?」
「別にいいわよ」
「それじゃあな」
 こうしたやり取りをしてだった、常盤は母と二人で夕食を食べて風呂に入ってそのマナを牛乳と一緒に食べた。天使がマナと言っていたパンは美味かったがやはりコンビニのパンだった。そして彼が二度と世界を救う戦いをすることはなかったが。
 時々だ、その人面猫の姿をした天使とガングロギャルの魔王が公園で誰かと勝負をしているのは見た。常盤はそれを見てまたやってやがるといつも思った。


人面猫から   完


                   2020・7・19
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