第二章
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「だからだよ」
「それでだね」
「そう、そのことを忘れないで」
「この子が死ぬまでだね」
「大事にするんだよ」
「うん、そうするよ」
蒼汰も強い声で答えた、こうしてだった。
彼は犬を家に連れて帰った、犬は雄で名前は彼が犬の顔がおじさん顔だからという理由でゴンゾウにした。すると。
母も家に帰って来た父もその子犬を見て言った。
「また老けているわね」
「ああ、人間みたいな顔でな」
二人でその犬を見て言った、犬は蒼汰も二人も見て尻尾を振ってへっへっへ、と舌を出して立っている。
「おじさんみたいだな」
「あなたより老けてない?」
「そうだよな」
父は三十五になってそろそろ皺が出て来た顔で言った、面長だった顔にも少し肉がついてきている。そして母も短い黒髪に白いものが出て来ていて白い肌が少し衰えている。大きな垂れ目はそのままだた。見れば蒼汰は目はその母親似で他は父親似だ。父の名前は壮一といい母の名は由美奈という。
「この子は」
「まだ生まれてすぐみたいだけれど」
「それでこの顔はな」
「ちょっと可哀想だな」
「そうね、しかも蒼汰はね」
母は今度は息子を見て言った。
「ゴンゾウなんて名付けたし」
「そのままおじさんの名前だな」
「そうよね」
「だってそんな顔だから」
蒼汰は母にあっさりと答えた。
「だからだよ」
「それでもね」
「あまりセンスのいい名前じゃないな」
「名付けたから仕方ないけれど」
「どうもな」
「確かに顔はよくないけれど」
蒼汰が見てもだ。
「こいつ最初から僕に懐いて言うこと聞くし」
「それでなの」
「いい子だっていうんだな」
「そうだよ、お父さんもお母さんも人は顔じゃないっていうし」
ここで蒼汰はこうも言った。
「だから犬もだよ」
「ああ、それはな」
「その通りよ」
二人も犬の顔のことは言ったが息子にいつも言っているのでこう答えた。
「大切なのは中身だからね」
「性格がどうかだからな」
「幾らお顔がよくても性格が悪いとね」
「どうしようもないからな」
「こいつ性格はいいから」
だからだというのだ。
「いいよ、おっさんの顔なんてどうでもいいよ」
「そうか、お前がそう言うならな」
「お母さん達も顔のことは言わないわ」
「そういうことでね、じゃあゴンゾウこれから宜しくな」
「ワンッ」
ゴンゾウは蒼汰に一声鳴いて応えた、そしてだった。
彼は相良家の犬になった、すると。
ゴンゾウは蒼汰が言った通り非常に賢く人懐っこい犬だった、決して無駄に吠えたり唸ったり噛んだりせず。
言うことはちゃんと聞いて忘れなかった、やたら元気でいつも跳ね回る様に動き散歩にはかなりの体力を使ったが。
それでも人を引っ張ることはせず母も言った。
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