第二章
[8]前話
英梨は実際に家にいる時はワラビと一緒にいる様にした、散歩の時もそうでそしてその他の時もであった。
ワラビと一緒にいた、それでワラビによく声をかけた。
「ワラビ、一緒に遊ぼうね」
「ワンワン」
おもちゃで一緒に遊んだりもした、そうしていると。
英梨はいつも笑顔でいる様になった、そしてワラビもだった。父はその娘達を見て妻に対して明るい笑顔で話した。
「英梨もワラビをいじめたりしなくてな」
「ワラビも英梨に懐いてね」
「本当によかったな」
「ええ、若し仲が悪かったら」
英梨とワラビがというのだ。
「困っていたわ」
「折角一緒に暮らしているからな」
「ワラビもうちに迎えたからには」
彼女が一歳の時に迎えた、前の飼い主が引っ越しで飼えなくなり里親を募集したのをネットで観て家に迎えたのだ。
それで一緒にいるが。
そのワラビと英梨が仲良くなってそれで言うのだった。
「英梨とな」
「姉妹になったからね」
「仲良くしてくれないとな」
「駄目よ」
「そうだよな」
「だからああしてね」
「仲良くなってくれたらな」
一緒に遊ぶ英梨とワラビを温かい目で見ながら話した。
「よかったと思っていて」
「本当にそうなってくれてね」
「よかったな、ただワラビの方がな」
彼女の方がというのだ。
「寂しがりだな」
「そうね、英梨よりもね」
人の娘の彼女よりもというのだ。
「寂しがりね」
「犬は寂しがりだな」
「そうね、むしろ人間よりもね」
「だからいつも見てな」
「声をかけてくれて」
それでというのだ。
「そうして欲しいのね」
「そうだな、犬はそうした生きものなんだな」
「そうね、寂しがりだから」
「いつも見てあげないとな」
「無視するなんてことは」
それこそとだ、妻は夫に話した。
「絶対にね」
「あったらいけないな」
「そうね、そのことは覚えておきましょう」
「英梨にも言っておこうな」
「犬はそうした生きものだって」
今もワラビと遊ぶ英梨を見て話した、実際に二人は英梨に犬のそうしたところをあらためて話した。そして。
ワラビにいつも声と笑顔をかけて見る様にした、するとワラビは。
いつも幸せそうだった、家の中で何のストレスもない感じで暮らしていた。総一郎はそのワラビを見てまた由香奈に話した。
「じゃあこれからもな」
「ええ、ワラビと一緒にね」
「暮らしていこうな」
「そうしていきましょう」
妻も笑顔で頷いた、ワラビだけでなく彼等も笑顔になっていた。自分達の笑顔で笑顔になっている彼女を見てさらに。
犬はいつも一緒にいて欲しい 完
２０２０・１２・２５
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