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犬はいつも一緒にいて欲しい
第一章

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                犬はいつも一緒にいて欲しい
 ワラビは薄い茶色、ゴールデンレッドリバーと同じ毛の色のブリアードである。毛は癖がありむくむくとしていている。耳は垂れていて目は隠れている。
 性格は大人しく優しくのどかで人懐っこく愛嬌がある。女の子らしい性格と言えばそうなるがその彼女を見てだ。
 一家の父である沢海総一郎はまだ小学三年の娘の英梨に言った。
「ワラビだけじゃなくて犬はな」
「犬ならなの」
「ずっと一緒にいて優しくな」
 その様にというのだ。
「してあげないと駄目なんだ」
「そうなの」
「人間と同じなんだ」
 総一郎は黒髪をショートにしていてはっきりした目を持っている、口元は引き締まっている。もう三十代後半だが若々しい顔立ちであり小柄な百六十位の背で引き締まった身体は中学生に見える。そして英梨は黒髪を左右で髷にしていて後ろは伸ばしている。目は父親譲りではっきりしたもので高い鼻と紅の大きめの唇は母の由香奈譲りだ。子供らしい体格で服もだ。 
「だからだよ」
「ずっと一緒にいてなの」
「優しくな」
 その様にというのだ。
「してあげないと駄目なんだ、悪いことをしたら叱って」 
「私にするみたいに」
「そうしないと駄目だけれど」
 それでもというのだ。
「このことも人間と同じなんだ」
「いつも一緒にいてなのね」
「優しくしてな」
 そしてというのだ。
「声をかけて無視はしないで殴ったりしたら駄目だぞ」
「いじめたら駄目なのよ」
 母の由香奈も娘に話した、艶やかな目鼻立ちで三十代後半でも黒のロングヘアには光沢がある。夫と同じ位の背であるが胸は大きく肌は奇麗だ。ロングスカートとセーターという地味な服装でも色気がある。
「つまりはね」
「犬もなのね」
「英梨ちゃんもいじめられたら嫌でしょ」
「うん」 
 母の言葉に頷いた。
「絶対に」
「無視されたり意地悪されたりひっぱたかれたりね」
「そう、誰だってそうされたら嫌だから」
 それでというのだ。
「ワンちゃん、ワラビにもね」
「そんなことをしたら」
「そう、嫌だから」 
「したら駄目ね」
「そうよ、いつも優しくして」
 そしてというのだ。
「一緒にいるのよ」
「お父さんやお母さんと一緒ね」
「ワラビは家族だしね」
「一緒に暮らしているから」
「そうしてあげてね、いいわね」
「わかったわ、じゃあ私これからもワラビと一緒にいるね」
 笑顔でこう言ってだった。
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