第三章
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ドアの鍵を開けて中に入った、すると。
「ワンワンワン!」
「!?」
その犬ゴンが玄関のところにちょこんと座っていた、そして。
明るく鳴いて尻尾をぱたぱたと振っていた、佳奈はその彼を見て思わず目を丸くさせた。
「これは」
「気にしてなかったみたいですね」
茉祐はその佳奈に顔を向けて答えた。
「ワンちゃんの方は」
「そうみたいね」
「怒鳴られて悲しかったかも知れないですが」
「それでもなのね」
「先輩に会える方が」
その方がというのだ。
「ずっとです」
「いいのね」
「そうみたいですね、ほらワンちゃんは心が奇麗ですね」
茉祐は笑って佳奈にこうも話した。
「私達人間よりも」
「ええ、よく言われているわね」
「ですから」
それでというのだ。
「ゴンちゃんもですよ」
「そのこと許すどころか」
「最初から気にしていなくて」
「私が帰って来て迎えてくれて」
「一緒にいたいんですよ」
「そうなのね、犬っていいわね」
佳奈はこれまで強張っていた顔を綻ばさせて言った。
「凄く心が広くて奇麗で」
「そうですよね」
「ゴンもね、それじゃあゴン」
佳奈は彼に優しい笑顔で声をかけた。
「これからご飯あげるわね、おもちゃもあるわよ」
「ワンワン」
ゴンは佳奈にきらきらとした目で応えた、その彼に対して。
佳奈は靴を脱いで家にあがるとそっと頭を撫でた、そのうえで茉祐に顔を向けて言った。
「じゃあまずはね」
「ゴンちゃんにご飯あげて」
「おもちゃもあげてね」
そうしてというのだ。
「それでね」
「それからですね」
「私達もご飯にしましょう」
「そうですね、ハヤシライスですね」
「ええ、カレーライスじゃなくてね」
「私そっちも好きですから」
ハヤシライスもとだ、茉祐は佳奈に笑顔で応えた。
「それじゃあ」
「ええ、今からね」
「ゴンちゃんにご飯あげましょう」
「今日はご馳走よ」
「ワンッ」
佳奈の今の言葉にだった。
ゴンは一際明るい声を出した、そして彼女があげたご飯を美味しそうに食べてそしておもちゃで遊んだ。二人はそんな彼を見つつ笑顔でハヤシライスを食べた。
怒鳴っても来てくれて 完
2020・12・23
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