第三章
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「奇跡だったって」
「言われたか」
「はい、それで身体洗って栄養注射とかして」
そしてというのだ。
「何とか回復したんですが」
「どうなったんだ、それで」
「俺の姉ちゃんが引き取ったんですが」
それでもというのだ。
「二匹共ご飯あげても食べようとしないで人間に近寄らないです」
「虐待されたから警戒しているか」
「ずっと二匹で部屋の隅にいます」
そうした状況だというのだ。
「姉ちゃん一人暮らしですが」
「ずっとなんだ」
「水やミルクは何とか飲んでますけれど」
「それでも食べないとな」
「はい、獣医さんも栄養注射してくれて」
「生きてはいるんだな」
「ですがそれだけです」
ただ生きているだけだとだ、義定は警官に話した。
「ですから俺も姉ちゃんも」
「猫達が心配か」
「これからどうなるか」
義定は難しい顔で言った、そしてその一人暮らしをしている姉勤めている会社の近くのマンションに住んでいる彼女の家にも行って猫達を見た。
だが猫達はずっと部屋の隅にいる、そこから決して出ようとしない。義定はその猫達を見て姉の光流、量の多い黒髪を長く伸ばしていて穏やかな顔立ちで特に目が優しい彼女に問うた。
「相変わらずかよ」
「ええ、ああしてね」
姉は彼に暗い顔で答えた。
「ずっとなのよ」
「動かないんだな」
「おトイレはして」
「ミルクとかは飲んでもか」
「食べることはね、それに私に近寄ることも」
それもというのだ。
「ないの」
「そうなんだな」
「本当にね」
「ずっとなんだな」
「あのままなのよ」
「そうか、じゃあまた栄養注射にか」
「行くかも知れないわ」
その猫達を見て言う、見れば実際にだ。
猫達はそこから動かない、そして二人を警戒しきっている目で見ている。お互いに身体を寄せ合ってずっとそうしている。
その猫達を見つつだ、光流は義定に話した。
「名前は付けたの」
「首輪もだしな」
「お姉さんの方はミンでね、妹はリンなの」
二匹の猫達を見て話した、見れば二匹共腹は白く他の部分は茶色で姉の方がやや大きい。
「そう名付けたの」
「そうなんだな」
「けれどミンもリンもね」
二匹共というのだ。
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