第1部
ポルトガ〜バハラタ
グプタとタニア
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なんでんなことお前にいちいち……」
「残りの二人はここで待ってろ。可能性は低いが、もしかしたら犯人がまた戻ってくるかもしれないからな」
「わ、わかった!」
「はーい♪」
そう手短に言うと、ユウリは近隣の家が建ち並ぶ住宅地へと走り出した。ナギもぶつくさ文句を言いながらも、ユウリとは反対の方向へ駆け出した。
「さすが勇者様じゃ。早速わしらの願いを聞いてくださる」
感動にうち震えた様子で、マーリーさんはユウリに感謝している。けれど隣にいるグプタさんは、未だ苦悩の顔を滲ませている。
「確かに勇者さんに頼むのが確実とは思うけど、元はといえば僕が彼女を守れなかったのが原因だ。……ごめん、皆さん! 僕は僕の手で彼女を救い出します!!」
「え?! ちょ、ちょっと待って! グプタさん!!」
慌てて私が制止しようとするも、タニアさんのことで頭が一杯のグプタさんは、私の足では追い付けないほどのものすごい早さで走り去ってしまった。
「おーい!! バカなことを考えるな!! グプター!!」
マーリーさんも呼び戻そうと声を荒げるが、グプタさんの耳には届かなかった。
「まったく……。勇者様に任せておけばいいものを……。将来あいつに店を任せようと思っていたが、このままでは……」
「マーリーさんの店を、グプタさんに継がせる予定だったんですか?」
「ああ。わしの店は世界でも珍しい『黒胡椒』の専門店じゃからな」
『黒胡椒?!』
思いがけない発言に、私とシーラはたまらず声を上げる。
「じゃが、最近店の黒胡椒が盗まれる被害にあってな。今は店を閉めておる」
そっか。だからポルトガに黒胡椒が入ってこないんだ。
「きっとタニアを拐った奴と同じ奴に違いないんじゃ! なんでわしばっかりがこんな目に……」
そう言うと、マーリーさんは顔を手で覆い、泣き崩れてしまった。
「マーリーさん。タニアさんは私たちが必ず救い出してみせます。だから、安心してください」
「そーだよおじーちゃん! ウチのユウリちゃんはスゴいんだから!」
私とシーラは、意気消沈しているマーリーさんを必死で励ます。
やがて、ちょうど同じタイミングで二人が戻ってきた。
「あれ? グプタってやつはどこ行ったんだ?」
ナギの問いに、私とシーラは今あったことを説明した。すると、無表情のユウリの顔に血管が浮き出て来るのがわかる。
「なんでお前らがいて止めなかったんだ!!」
「だって、ものすごい早さだったんだもん! それに犯人がまたここに来るかもしれないって思ったから、迂闊に動けなかったんだよ」
私が泣きそうな顔で訴えると、ユウリ
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