第1部
ポルトガ〜バハラタ
グプタとタニア
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げる青年と、老人の姿が見えた。
「あのー!! どうしたんですか!?」
私が大声で呼び掛けると、二人は一斉に振り向き、私たちが走り寄ってくる姿に気がついた。
「旅の人!! タニアを……青い髪の女性を見かけませんでしたか!?」
「タニア? その女性がどうかしたんですか?」
「人買いに拐われたんです!!」
『人買い?!』
物騒な言葉に、私たちは驚きを隠せずにいた。
「ここに来る途中は見ていない。おそらく逆方向だろう」
「そんな……。それじゃあタニアは……」
ユウリの話を聞いて、弱々しい声を放ちながら地面にへたりこむ青年。見たところ二十歳過ぎのやや細面の男性だが、今はショックで顔面蒼白になっている。
「おい、お前はその女が拐われたところを見たのか?」
「……一瞬ですが、見ました。僕が、もっと早く彼女のもとに向かっていれば……!! 」
ユウリの問いに青年が答えると、その時の状況を思い出したのか、彼の目から涙が溢れだす。怒りと悔しさからか、彼は地面を拳で叩いた。
「グプタよ。今は嘆くより、旅人さんに事情を話す方が先じゃ」
傍にいた老人に諌められ、グプタさんはゆっくりとその場から立ち上がる。
「……お見苦しいところをお見せしてすいません。僕の名はグプタ。こちらにいるのが、彼女の祖父のマーリーです」
そう言うと、マーリーさんは一礼した。
「俺はユウリ。魔王を倒す旅をしている」
「魔王……!? では、あなたがあの……!!」
「ということは、あなたが伝説の勇者様なのですね!?」
ユウリの素性に、二人は歓喜の声を上げた。
「それより、詳しい状況を教えろ。誰に連れ去られたんだ?」
しびれを切らしたユウリが話を促す。グプタははっと気づいたあと、あわてて話し始めた。
「すいません。ええとですね、僕たちはここで待ち合わせをしていたんです。けれど、ちょうど僕が待ち合わせ場所に到着する手前で、突然覆面姿の男が現れて、すでに待っていたタニアを連れ去ってしまったんです」
「覆面……。まさかね」
その言葉に、嫌な思い出がよみがえる。シャンパーニの塔にいた、変態じみた格好をしたカンダタと言う盗賊と戦ったことを。
「この辺りは大きな川が流れているが、近くに橋はない。泳いで渡るには流れが早すぎるし、向こう岸の方に逃げ込んだのは考えにくい。そうなると、南の方には行ってないか……。だがそれだけで場所を特定するのは難しいな」
一人ぶつぶつと呟くユウリ。闇雲に探しだすのは無謀だが、かといって場所を特定できるほどの情報は少ない。
「その辺に目撃者がいないか探してみるか。おいバカザル。お前は反対側に行ってさっと聞いてこい。俺はこっちを探す」
「はあ!?
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