第1部
ポルトガ〜バハラタ
グプタとタニア
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る。お父さん、つまりオルテガさんが家を出たということは、魔王を倒すための旅に出たということなんだろう。
私は無意識に、これ以上この話をしたらいけないと感じ、口を噤んだ。
「お、お待たせしました。こちら熱いのでお気をつけてください」
そこへ、絶妙なタイミングで店員さんが食事を運んできてくれた。だが、両手に収まりきらないほどのたくさんの料理を持ってフラフラとテーブルの前に近づいたとたん、店員さんは足を床につまづき転んでしまった。
ガッシャーーーン!!
当然のことながら、手にしていた料理は全て床やテーブルへとダイブした。最初に出そうとしていたパンとスープ、サラダは弧を描き、窓の向こうの西日に照らされながら無惨な姿となる。
さらに、激しい物音に起こされて思わず顔をあげたナギに、出来たてのスープが降りかかったではないか。ナギは悲鳴をあげたあと、急いで手近にある水の入ったグラスを掴むと、頭から水を浴びた。
「おいコラ!! 何するんだよ!!」
頭に火傷をし、さらにスープと水をかぶってびしょ濡れになったナギは、怒り心頭で店員さんの胸ぐらを掴み詰め寄った。店員さんは青い顔をしながら、「ごめんなさい!」と何度となく謝った。
「ナギ、わざとじゃないし、もう許してあげて。ねえユウリ、ナギに回復呪文かけてあげてよ」
「こんな下らないことにMPを消費したくはない」
ああ、そういう人だった、この人は。
私は店員さんからタオルを貰い、ナギの頭や体を拭いてあげた。
「本当に申し訳ございません。また新しいのをお持ちします」
そう言うと、そそくさと厨房の方に戻っていく店員さん。するとそこでも、料理人の人に強く怒鳴られていた。
耳を立てて聞いてみると、どうやらあの男性店員は数日前に雇われたばかりの人らしい。道理で不馴れなわけだ。
しかも、その理由が、前に働いていた若い女の人が急に行方不明になってしまったからだとか。
「女性が行方不明か……」
ユウリはそう低く呟くと、何か心当たりでもあるのか、難しい顔をした。
「あの店員に詳しい話を聞いてみるか」
そう言って席を立ったとたん、店の外から悲鳴のような声が聞こえた。
「なっ、何だ今の声?!」
驚いたナギが、声のした方に顔を向ける。酔いが回っているシーラも、何事かとキョロキョロと辺りを見回した。
「行くぞ」
そう短く言い残すと、イスから立ち上がったユウリはすぐに店の入り口へと向かう。私たちも、急いでユウリのあとを追うことにした。
「誰かぁ!! 助けて下さい!!」
外に出て、誰かの叫び声が聞こえる方へ走り出すと、町の真ん中を流れる川の畔で声を上
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