第99話『予選D』
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ま、こんなもんか」
動かし始めてから僅か15秒。ピタッと彼が手の動きを止めた時、模様が綺麗に揃ったキューブが台には置かれていた。
すると、それが鍵となったかのように目の前の壁が突然音を立てて上がり出す。そして、先へ進む通路が姿を現した。
「こちとら伊達にぼっちやってねぇんだよ」
伸太郎のパズル歴を侮るなかれ。彼は物心ついた頃から、あらゆるパズルに触れてきていたのだ。
コミュ障ゆえに現実の友達はほとんどいなかったが、もはやパズルが親友だったと言っても過言ではない。それほどまでに、彼のパズル技術は卓越したものであった。
「やっぱりワンチャンあるんじゃねぇの?」
伸太郎は上機嫌のまま、近道へと足を踏み入れる。これがどれくらいのアドバンテージになるかはわからないが、上位を取れる自信は不思議と湧いてきた。
鼻歌混じりに先へ進む伸太郎の背後で、壁が再び閉じられるのだった。
*
「灼き尽くせっ!」
緋翼が焔を纏った刀を振るうと、狼型のモンスターがバタリと地に伏せる。同時に、4Ptを獲得した。
これで今の所持ポイントの合計は12Pt、順位は64位だ。妥当ではあるが、当然納得はできない。
「もっと強いモンスターを狩らないと……」
この狼型のモンスターは一撃で仕留められた。ならば、まだまだ上は目指せる。10Ptのモンスターはさすがに厳しいかもしれないが、6、7Ptのモンスターまでは頑張って挑みたいところ。もっとも、一度倒すまではポイントはわからないのだが。
「でも、地道に稼ぐのも怠らないっ!」
『ギェッ!』
背後、緋翼の不意をついて襲ってきた猿型のモンスターを無慈悲に灼き払う。ポイントは3Pt。物足りない気もするが、今は良しとしたい。
強敵を倒して稼ぐのも良いが、こうして一撃で片付くモンスターばかりを狙うのも1つの作戦だろう。どちらの方が効率が良いのかわからないが、少なくとも緋翼の作戦は、
「両方狙うに決まってるじゃないの!」
強敵も倒し、弱敵も倒す。もはや強欲に、貪欲にポイントを稼ぐしか勝ち目はない。2Ptのモンスターだって、5体倒せば10Ptと同義。それならば、強弱に拘らず手当り次第に狩っていけばいいだけのこと。
……これが最後の大会なのだから、妥協はしたくないのだ。
予選を突破することは、何も終夜だけの願いではない。初めてこの大会を目にした時から、緋翼だって本戦に出てみたいとずっと思っていた。
これには想い出になるからという理由もあるが、何より一番の理由は彼女自身が負けず嫌いだからだ。予選で敗北するなんて性にあわない。
「絶対に勝ち残ってやるんだから」
──しかし、緋翼
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ