第8話
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スを引いた。
ゲオルグは小さく息を吐いて表情を引き締めると、駆け寄ってくる隊員たちのほうへと
顔を向けた。
「突入を継続する。 行くぞ」
落ち着いた口調で発せられたその言葉に、隊員たちはうなずき
身をひるがえして遺跡の奥へと再び歩き出したゲオルグの背中を追う。
いくつかの角を曲がり、彼らは最終目標地点であった遺跡の最奥にある礼拝堂へと到達する。
そこにはドーム状に掘りぬかれた空間があり、壁面には石像がずらりと並んでいる。
しかしそれらには破壊の痕が深く刻まれていた。
シャッハはそのさまを見て眉間に深いしわを寄せる。
そしてその片隅には、10人ほどの人影がひとかたまりになって立っていた。
ゲオルグはその空間への入り口の手前で足を止めると、シンクレアに通信を送った。
『ゲオルグさん。 こちらは礼拝堂への突入準備を完了しました』
「了解。じゃあ、そっちが先に突入を開始してくれ」
『わかりました、援護は頼みますね。 ではいきます』
シンクレアが通信を介してそう言った直後、礼拝堂の中にシンクレアたちが
走る足音が鳴り始めた。
「誰だ!?」
しわがれた男の声が礼拝堂の中に反響し、続いていくつもの叫び声があがる。
「シンクレアたちを援護する。 行くぞ!」
ゲオルグはシンクレアの突入に呼応して援護すべく、自らの後ろに控える隊員たちを
振り返ると、彼らに向かって檄を飛ばした。
そして、もう一度前へと向き直り、礼拝堂の中へと歩を進めた。
「畜生! 管理局の犬め!!」
「俺たちの世界は俺たちのもんだ!!」
ゲオルグの目に飛び込んできたのは、すでにテロリストたちの制圧を終えつつあるシンクレア達と
彼らに向かって怨嗟の声を上げるテロリストたちの姿だった。
「なんだよ、出番なしか」
意気込んで飛び込んだにもかかわらず、まったくやることのなかったゲオルグは
走るスピードを緩めて立ち止まり、後ろから追いついてきたシャッハと
お互いに苦笑しながら顔を見合わせた。
「制圧完了です、ゲオルグさん」
「お、おう。 ご苦労」
制圧を終え、満足げに笑みを浮かべて歩み寄ってくるシンクレアを、
ゲオルグは不完全燃焼ぎみの複雑な表情でそれを迎えた。
「作戦終了だな。 そいつらをこの世界の部隊に引き渡して引き揚げだ」
「はい」
ゲオルグの言葉にシンクレアは頷き、テロリストたちを捕縛している部下たちのほうへと
戻っていく。
その背中を見送り、ゲオルグは後ろを振り返る。
「シスター・シャッハもお疲れさまでした」
「いえ、ゲオルグさんこそ見事なお手並みでした。 しかし・・・」
シャッハはそこで言葉を切ると、壁面の石像を見渡す。
「どうか
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