第8話
[6/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
ゲオルグの呼びかけに、間髪を入れずシンクレアは応じる。
その声を聞いたゲオルグは唇を軽く引き結ぶと目を閉じた。
数秒後、再び目を開いたゲオルグはゆっくりと口を開く。
「・・・突入開始」
つい先ほどまでよりも低い声で言葉少なに告げると、
自らも遺跡の入口に向かって走り出した。
地面に積もった雪を蹴飛ばしながら走るゲオルグのあとに、
シャッハと隊員たちが続く。
ゲオルグは石で積み上げて作られた遺跡の入り口の脇までたどり着くと
壁を背にして立ち、部下たちが追い付いてくるのを待った。
全員が揃ったのを確認すると、入口を挟んで向かい合う曹長に向かって
”行け”と合図を送った。
曹長は小さくうなずくと、入口の向こうに広がる空間にいるかもしれない敵に
注意を払いながら、慎重な足取りでその身を遺跡の中に滑り込ませた。
その動きに合わせるようにゲオルグ自身も遺跡の内部へと入る。
入口から続く暗い通路の奥をじっと見やり、敵の姿が見えないことを確認すると
慎重な足取りで奥へと進み始めた。
遺跡が経てきた年月の長さを示すように、壁面から落ちてきた石材のかけらが
床面のところどころに転がる通路を一行は進んでいく。
「班長、生体反応です」
いくつかの通路の交差点を通り抜け、入口から5分ほど歩いたところで
ゲオルグのすぐ後ろを歩く隊員が声をあげた。
「位置は?」
「前方100mです。 地図によれば、この先にある曲がり角の先ですね」
「了解した。 各員、周囲の警戒を厳に」
ゲオルグの指示に応え、隊員たちはそれまでにも増して慎重に周囲を見回す。
そしてゲオルグも速度を落として慎重に前進する。
雨水が石と石の隙間から染み出しているのか、時折ピタピタと
水が滴り落ちる音が通路に響く。
「・・・これは」
やがて、彼らの前に壁面が崩れて山のように積み重なり、
通路をふさいでいるさまが見えてきた。
ゲオルグはその前に立つと、苦い表情で上の方を見上げながら小さく声をあげた。
「う回路は?」
「少々お待ちください」
ゲオルグが尋ねると、すぐそばに控えていた隊員は地図を確認しはじめた。
10秒ほどの沈黙ののち、その隊員は顔をあげた。
「2つ手前の交差点まで戻れば、別のルートで進めます」
隊員が指し示すルートを確認したゲオルグは小さく頷くと、隊員たちの方に
向き直って声をかけた。
「う回して進むぞ」
ゲオルグが隊員たちに向かってそう言った直後、かつて壁だった石の山の
向こうから小さく足音が響いた。
ゲオルグはそれに反応して、隊員たちに向かって下がれと手で合図した。
直後、轟音とともに石の山が崩れ、小さな石のつぶてが隊員たちに
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ