第1部
ポルトガ〜バハラタ
ノルドの洞窟
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に、私はつい反論する。
ユウリも半分冗談で言ったのか、これ以上はなにも言わなかった。
すると、入り口とは反対の方から、何やら足音が近づいてきたではないか。振り向くと、私たちより頭二つ分ほど背の低い、髭を蓄えた小柄な男性がこちらを見て立っていた。
「勝手にわしの家に入り込んで、旦那方は一体なんだね?」
「俺は勇者のユウリだ」
きっぱりとそう言われ、一瞬ぽかんとする男性。そもそも、向こうから見れば私たちは完全に不法侵入者だ。私は補足するように、あわてて自己紹介をした。
「勝手に入ってしまってすいません! 実は私たち、本当は魔王を倒す旅をしてるんですが、わけあって黒胡椒を買いにバハラタまで行きたくて、ノルドさんなら抜け道を知っているという情報を聞いてここへ来たんです。ひょっとして、あなたがノルドさんですか?」
「確かにわしはノルドだが……、ここはあんたらみたいな怪しい連中が簡単にバハラタを行き来できないよう、管理も兼ねて住んでいる。おいそれと通すわけにはいかん。さあ、帰った帰った」
そう言って、睨み付けるように私たちを追い出そうとするノルドさん。
「おいホビット。俺たちはポルトガの王から直々に書状をいただいた。お前に渡すようにとな」
ユウリが一歩前に出て、懐から書状を取り出す。追い払われて機嫌が悪いのか、無造作にその書状をノルドさんに渡した。
「むっ?! これは……確かにあいつのサインだな。何々、『親愛なるノルドへ』……」
手紙を受け取ったノルドさんは、不承不承ながらもそれを開いた。そして、読み進めるうちに、険しかった表情が徐々に変わっていく。やがて読み終えると、書状を折り畳み、こちらに向かって一礼した。
「さっきはあらぬ態度をとってすまんかった。まさかわしの親友からの依頼でここに来たとは思わんかった。なにせついこの間、故郷に帰るという怪しげな旅の一座をうっかり通らせてしまったからの。疑心暗鬼になっておった。手紙の内容通り、あんたらに抜け道を教えてあげよう」
「怪しげな旅の一座?」
ユウリが眉をひそめて尋ねる。
「ああ。十人くらいの、全身黒ずくめの連中だった。各地を巡業しているとは言っていたが、今思えば疑問に残る点は色々あった」
確かに、いきなり見知らぬ黒ずくめの集団が現れれば、間違いなく不審に思うだろう。けど、どうしてノルドさんは彼らを通してしまったのだろう。
なんて思っていたら、ユウリが口を開いた。
「大方、一座の一人に病気の親がいて、その親が危篤だとかの知らせを受けたからすぐにでも通らせてくれ、とか言ってたんだろ」
「な、なぜわかった?」
驚いたノルドさんを尻目に、小さくため息をつくユウリ。
「怪しさのテンプレートみたいな
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