第1部
ポルトガ〜バハラタ
港町ポルトガ
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。
「おっと、すまん! 大事なことを忘れておった。バハラタに行くには、アッサラームの北にあるバーンの抜け道を通らなくてはならんのだ。バーンの抜け道はホビット族のノルドが管理しておってな、彼の承諾がないと通れんのだよ」
「どうすれば承諾を得られるのですか?」
「ノルドは人間嫌いではあるが、我が王にだけは信頼を置いていてな。王の頼みとあれば、喜んで通らせてくれるだろう。暫し待っておれ。今から王に直筆の手紙を書いていただく」
そう言うと大臣は、自ら王の部屋に向かっていった。そしてしばらく経ったころ、大臣は封筒を手にしながら小走りに戻って来た。
「こっ、これを、ノルドに渡して、もらえんか? きっと、許しを、得られるだろう」
大臣はぜえはあ言いながら、呼吸を整える。そんなになってまで急がなくても……。大臣の体調が心配になってくる。
「わかりました。吉報を届けられるよう、全力を尽くします」
「うむ、待っておるぞ!」
期待に満ちた目で私たちを見送る大臣。ひょっとして大臣も、黒胡椒の虜になっているのだろうか? 部屋を出るまで思い切り手を振っていた彼の姿を見て、私はそう思わずにはいられなかった。
「でもさ、意外と簡単に船が借りられそうでよかったね」
お城を出たあと、再び大通りへと続く大きな橋を渡りながら、私は前を歩くユウリの背中に向かってそう言った。
すると、彼は重い空気を放ちながら陰鬱な表情でこちらを振り向く。
「どこが簡単なんだ?! これならあのクズ盗賊を倒しに行く方が何倍も楽だろ!」
クズ盗賊というのは、おそらくシャンパーニの塔にいたカンダタのことだろう。
確かにレベルの高いユウリなら盗賊を倒すくらい造作もないだろうけど、凡人の私にとっては多少遠くてもおつかいに行く方が遥かにマシだ。
「……もしかしてユウリ、機嫌悪い?」
「当たり前だろ。いつ入荷するかわからん物を買いに行かせるなんて、無茶を言うにも程があるぞ」
うん、まあ、そうなんだけどね。ロマリアといい、ここの国といい、王様っていうのは多少個性的でないと務まらないのだろうか。
「まあまあ、もうお昼になるし、ユウリもお腹すいてるからイライラしちゃうんだよ。どこかで食事でもして、一休みでもしようよ」
「お前に言われなくてもそのつもりだ! 昼食が済んだらアッサラームに行くぞ!」
ああ、どうやら火に油を注いでしまったらしい。激昂したユウリは私に散々文句をいうと、勝手についてこいと言わんばかりの態度で近くにあった食堂に入っていった。
「相変わらず感情と理性のバランスがおかしいよな、あいつ」
ユウリに聞こえない程の声で、ぼそりと呟くナギ。
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