第1部
ポルトガ〜バハラタ
港町ポルトガ
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することになったのも、もともと王が気に入ったからでな、毎日のように召し上がっていたのだが、先ほど述べた通りそれが入手できなくなり、政務をするどころではなくなったのだよ」
えっと……それってつまり、大好きな食べ物が食べられなくなって、仕事が手につかなくなったってこと?
一国の王様がそんな理由で仕事を投げ出すなんて、そんなんでいいのだろうか?
ユウリですら、何とも言えない表情になっているではないか。
「あの、恐れ入りますが、『黒胡椒』というのは、それほどまでに夢中になれる食べ物なのですか?」
「うむ。それはわしも胸を張って言える。一度食べたら病みつきになる、ある意味恐ろしい存在だな」
大臣も食べたことがあるのか、頷きながら答えた。
「だが一般庶民にはまず縁のない話だ。何しろ胡椒一粒で黄金一粒が買えるくらい価値のあるものだからな」
「胡椒一粒が、黄金一粒……!?」
ユウリはそれがどのくらいの価値なのか知っているのか、愕然とした表情になった。
「ねえ、黄金一粒ってどれくらいの値段なの?」
「んなもんオレが知るわけないだろ」
私はナギに耳打ちするが、彼も知らないようだ。
「んとね、今だと、金が一粒あれば一年は食べるのに困らないんじゃないかな」
『ええっ!!??』
シーラの言葉に、思わず驚きの声をあげる私とナギ。ユウリがこちらを睨み付けるが、あまりの衝撃にこれ以上言葉が出ない。
そんなものを毎日食べてるの!? 一般庶民の私には信じられない話だ。
「おっと、話が逸れてしまったな。それで、黒胡椒が手に入らなくなった原因を調べるために、数組の冒険者に頼んだのだが、音沙汰がなくてな。勇者殿にも、バハラタへ行って黒胡椒を手にいれてきてほしいのだ」
ユウリはしばらく思案したあと、こう言った。
「……わかりました。私も黒胡椒とやらに興味があります。ですが、条件があります」
「む、何だ?」
「もし黒胡椒を王に届けることが出来たなら、そちらで所有している船を一隻貸していただきたいのです」
「おお、船の一隻や二隻くらいいつでも貸すぞ! 何なら航海士も数人用意するわい」
随分気前のいいことを言う。それほどまでに黒胡椒が欲しいのだろうか。
「ありがとうございます。必ずや黒胡椒を手に入れて見せます」
「良く言ってくれた!! もし手にいれることができれば、代金はあとで別の使いの者に届けさせるつもりだから安心してくれ。あと、店の者にこれも渡してくれ。宜しく頼むぞ、勇者殿!!」
大臣から何やら書状のようなものを受けとると、深々と頭を下げる私たち。挨拶を済ませ帰ろうとするのを、大臣が何かを思い出したかのようにあわてて止めた
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