第1部
ポルトガ〜バハラタ
港町ポルトガ
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ユウリの問いに、大臣は周囲を見渡しつつ、困ったように答えた。
「うむ。それはだな。我が国に輸入されてくる『黒胡椒』がここ何日か届かなくなってな。調べたところ、輸入元であるバハラタにその黒胡椒が入荷されていないらしい。そうなると我が国の経済が立ち行かなくなる恐れがあるのでな。一時的だが他国との交易を禁止することにしたのだ。それと、……あまり大きな声では言えぬのだが、最近魔物の動きが活発化してるとの噂でな。どうやらどこかの国に、魔物が人の姿に化けて送り込まれたらしいのだ」
「魔物が送り込まれた……? それは本当なのですか?!」
「いや、定かではないが、そういう噂を流している者が複数いるのでな。全くの嘘だとは言い切れぬ。だが急に鎖国状態にしてしまえば諸外国に要らぬ混乱を与えることになるだろう。そこで判断したのが輸出入制限であった」
「なるほど。輸出入制限は表向きで、本来の目的は魔物を国に入れないようにするための防衛策というわけですか」
「ああ。これが我が国を守る最大限の施策なのだ。おそらく勇者殿にも思うところはあるだろうが、自国のために多少の犠牲はやむを得ん」
「その考えはもっともであり、私が口出しするようなことではありません。ただ私どもも関所が封鎖する前にここへ来れたからまだ良かったのですが、あまりにも急すぎて商人たちが暴動などを考えないかが心配です」
さりげなく関所を勝手に通ったことを誤魔化すユウリ。私は一瞬ヒヤヒヤしたが、大臣の様子を見る限りバレてはいないようだ。
「それに関しては、ルーラかキメラの翼で我が国を訪れる際には問題ないとしている。一度我が国に訪れたことがあるなら、魔物である可能性はないだろうからな」
つまり、初めてポルトガを訪れる人は入れなくて、もとからポルトガを行き来してる人はルーラかキメラの翼で入れるってことだろうか。
「なるほど。それなら大丈夫ですね」
ユウリも納得したような顔で頷いていた。
「ところで、ここに訪れる際に聞いたのですが、王様の頼みと言うのは一体何のことでしょうか?」
ユウリが尋ねると、大臣の顔がぱっと輝いた。
「おお、そうだった!! 実はな、先ほど話に出た『黒胡椒』に関係があるのだ」
急に大臣が身を乗り出してきたので、ユウリは思わず後ずさる。小さく咳払いをしたあと気を取り直し、話を進めた。
「すいません。その『黒胡椒』と言うのは、どういうものなのですか?」
そうそう、それは私も知りたかった。ユウリも知らないってことは、一般的に出回ってるものじゃないのだろうか?
「そうか。お主たちは知らないのか。『黒胡椒』はいわゆる、塩とか砂糖などと同じ、調味料の一種でな、王はこれを使った料理が大層好きなのだ。我が国にこれを輸入
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ