チー君の名前
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ばして、注文を言いつけるチー君。ハルトは自分が店員であることを思い出した。
「チー君。……もう……あ、私はホットココアでお願い」
クトリの注文をココアに伝え、「了解! すぐ持っていくね!」ハルトはテーブル掃除を再開しようとした。
「あ! そうだ!」
だが、その足をクトリの声が止めた。
「ねえ、ハルト君。せっかくだし、マジック何か見せてよ」
「え? ここで?」
「うん! だって……」
「止めてよ、姉ちゃん」
だが、クトリの声をチー君が遮る。
「あんなのつまんないよ。ただのタネ隠しじゃん。くだらないよ」
(そのタネ隠しを楽しみにしてなかった君?)
「チー君!」
クトリがチー君を咎めるが、反抗期の少年はどこ吹く風。
「何が面白いのあんな子供だまし。姉ちゃん、案外お子様じゃん」
「チー君!」
今度のクトリの声は、棘があった。ビクッとして、可奈美と木綿季の会話も止まる。
「そういうのは失礼でしょ!」
「フン」
「チー君!」
「まあまあ。俺も気にしてないし」
ハルトはクトリを宥める。
「そっか……もうチー君は、マジックは卒業か……」
「まあまあ、ハルトさんもがっかりしないで」
そう慰めてくれたのは、盆に注文の品を乗せたココアだった。
「はい。えっと、チー君って呼んでいい?」
「ダメ」
「じゃあ、お兄さん! ブラックコーヒーだね」
一瞬、チー君の顔が綻んだ。お兄さんという響きがよかったのだろうか。
ブラックコーヒーを一気に飲み、「苦っ!」とむせる。
「で、クトリちゃんにはホットココア!」
「ありがとう!」
「木綿季ちゃんは、ココアブレンドだね!」
「うん!」
ココアの手で、クトリと木綿季の前に、それぞれの注文が並べられた。
「にが……ねえ、これ苦くない?」
チー君の文句に、ココアはきょとんとした。
「だって、ブラックコーヒーだよ? 苦いのものだけど……お砂糖いる?」
「! い、いらない!」
チー君はかすかに顔を赤くしながら、ココアの提案を拒絶した。
「な、何だよ!?」
「ううん。可愛いところあるなあって」
「っ!」
チー君は、机を強くたたいた。
「そういうの、止めてよ!」
突然の大声に、その場の誰もが動きを止めた。
その中、チー君は続ける。
「もう子供じゃないんだ! そういうこと……やめてよ!」
チー君は、怒りの眼差しでクトリを睨む。
「うんざりなんだよ! どいつもこいつも!」
そのままチー君は、ハルトを突き飛ばし、ラビットハウスを飛び出していった。
「待ってチー君! ……千翼!」
ようやく聞けた
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