お爺ちゃん想いの青年
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「あーあ……暇だな……」
友奈は吹き抜けを見上げながら呟いた。
二時間前後で病院に戻ってきた問題の院長、フラダリを捕まえた記者団が、目の前……病院のロビーその真ん中で、取材を開始している。迷惑この上ないが、フラダリはそれでも一人一人の質問に真摯に応えていた。
「真司さんもあの中だしな……」
ジャーナリスト志望の真司も、その中に突撃していった。最初はにっこりと見守っていた友奈も、やがてアプリゲームを弄り始め、今やそれにも飽きていたのだった。
「うーん……まさか、ここまでになるなんて……」
苦笑いを浮かべる友奈は、すぐ手ごろなところのウォーターサーバーの紙コップを取り出した。
縁でスイッチを押し、水をためていると、すぐ背後で人の気配がした。
「ん?」
「あ」
どこにでもいる青年。彼は、ウォーターサーバーを指さしており、友奈は「退いて」という意図を理解した。
「ああ、ごめんなさい」
友奈は謝ってゴミ箱の近くに立つ。冷たい水を飲み干し、ごみ箱に放った。
青年は会釈して、ウォーターサーバーの水を飲む。ゲホゲホとせき込んだ彼は、少しやるせない様子でコップをゴミ箱に放った。
「……」
彼は友奈の視線に気付いたのか、彼はこちらを向いた。青いジャージが特徴の彼は、ギロリと友奈をにらむ。
「んだよ」
「あ、ごめんなさい」
「……クソッ」
彼は友奈を、そしてロビーの記者団を見た。
「何が怪物だよ……院長もそっちにばっか気を取られてんじゃねえよ」
彼は粗暴にウォーターサーバーを蹴る。わずかな力しか込められていなかったが、それは冷水機を揺らし、半分残っている水面を大きく揺らした。
「あ、あの……」
「あ?」
不良らしき彼の目つきだが、友奈は動じなかった。そのまま尋ねる。
「あれって、どういう騒ぎなんですか?」
「……知らねえのかよ」
青年は膨れっ面で教えてくれた。
「この前、ここに人喰いの怪物が現れたんだと。看護婦一人がケガ、街にもそれなりのけが人。その怪物は、ここの患者が化けていた。見抜けなかったのか、って責任問題」
「そうなんだ……」
「そんなもんより、ウチの爺ちゃんを何とかしろってんだ」
青年は毒づいた。
「今にも死にそうだってのに、あんなんに人手取られてんじゃねえよ……」
青年はストレスのあまり、もう一度水を飲む。冷たい水で頭をクールダウンしているのだろうか。
「お爺ちゃん、大変なんですか?」
「……ああ」
青年は、数秒友奈を見つめて頷いた。
「もう九十超えてるからだけど、ガンでヤベえんだ。ったく、院長じゃねえと治せねえってのに……」
腹が立つと喉が渇く。そん
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