耳鼻科
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。
小さな診療所が、そのまま大型病院に移ったような施設。受付とウォーターサーバー。待ち合わせ席と本が並んでいる。
「……」
人の気配がない。ただ、奇妙な音が響いているだけだった。むしろ、一番大きな音は、ガルーダの羽音だった。
ハルトは、静かに入口より、耳鼻科へ入っていった。
そして。
受付。無人。
診察室1。無人。
診察室2。無人。
診察室3。
「……!」
いた。
若い女性が、診察椅子に座っている。普段なら、そこで診察を受けるところだが、今回は違う。
恐怖が張り付けられた顔は、血だらけであった。
その両耳には、桃色の管がついている。そして、その内部には、何かが彼女より流れ出ている。そのまま彼女は、体をビクンビクンと痙攣させていた。
「あ……あ……」
消え入りそうな声だけが、まだ息のある彼女より漏れ出ている。
そして、その管の先。彼女の両側の、二体の黒い怪物の鼻へ続いていた。象の頭を持つ怪物と、ゾウムシの顔の怪物。彼らは、その管を吸っており、女性の耳から何かを___脳髄を啜り取っていた。
ハルトの乱入に真っ先に気づいたのは、象のほうだった。それは管から口を離し、ハルトに向き直る。その際、落ちた管より、女性の体組織が滴った。粘着性のあるピンクのそれが、真っ白な床に広がっていく。
「お客さん。診察はまだお速いですよ?」
象の怪物は、ハルトを見て立ち上がる。それと時同じく、ゾウムシの怪物もハルトへ狙いを定めた。
「お速い診断をご希望ならば……いいでしょう」
「っ!」
そしてハルトは、間一髪、象の突進を受け流した。
だが次は、ゾウムシが襲い来る。
『ディフェンド プリーズ』
ハルトは出現した魔法陣を盾に、ゾウムシの動きを封じる。そのまま魔法陣ごとゾウムシを蹴り飛ばし、ハルトは二体の怪物より離れる。
だが。
「逃がさん」
象が冷たく言い放つ。
象の特徴たる鼻は、なんと伸縮自在。ハルトの体を捕らえ、縛り上げた。
「ぐあっ……!」
骨が軋む音。異常なまでの剛力に、ハルトは悲鳴を上げた。
「放せ……!」
「先生。いかがいたしましょうか?」
看護婦そのものとしか思えない声が、ゾウムシの怪物から聞こえてくる。象は「ふむ」と考え、
「少し速いが……頂こうか」
「畏まりました」
無表情に見えるゾウムシが、にやりと口を歪めたように見える。
象がハルトを見上げ、告げた。
「次の患者さん。どうぞ」
そして、ゾウムシの鼻より、再び管が現れる。それはあっという間のスピードでハルトの左耳につながる。
「っ……!」
耳元で聞こえる、蠢く音。塞
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