耳鼻科
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「……お」
エレベーターを待つハルトの目の前に、赤いプラスチックが現れた。鳥のプラモデル、レッドガルーダは疲れたように飛びながらハルトの手に収まる。
「よっ。ガルーダ。魔力切れだよね?」
最近めっきり可奈美にばかり懐いている使い魔。真っ先に自分のところに来ることがむしろ久しぶりに見える。
しかし、そんなお久しぶりなガルーダは首を振って否定。
「……てことは、またいつものパターンか……」
つまり、ファントム発見。行かなくてはならないことに、ハルトはため息をつくが、ガルーダはそれも否定。
「違う? 何?」
聞き返すと、ガルーダは小刻みに体を震わせている。飛ばずに、手のひらで震えているのもあって、その振動がハルトにも伝わってくる。
「ガルーダ?」
ハルトの呼びかけに対し、ガルーダは静かに再浮上。だが、いつものように旋回して案内はせず、じっとハルトの目を見つめている。こんなことは初めてだった。
「どうしたの?」
ハルトの質問に対し、ガルーダは「キーキー!」と鳴きながら、階段を下っていく。
「え? おい、ガルーダ!」
この大きな病院の最上階から階段を使えっていうのか。そんな文句を反芻させながら、ハルトは階段を駆け下りて行った。
じゅる。じゅる。
何かを啜るような音が聞こえた。
誰かが食事でもしているのだろうか。ガルーダに追いついたハルトはそんな疑問を持った。廊下には「飲食は専用スペースで」という張り紙が目の前にある。
「ガルーダ?」
いつもなら止まることなくハルトを先導するガルーダが、空中でホバリングしている。小刻みに震える体が、まるで恐怖をしているようにも見受けられる。
「おい?」
トントン、と小さな使い魔を小突く。ガルーダははっと我に返り、ハルトの目前で上昇、天井に頭をぶつけ、パニックになる。
「な、何?」
ハルトの疑問に対して、これといった回答を示さぬまま、ガルーダは進む。その後ろに着いて進むと同時に、じゅるり。じゅるりという音がどんどん大きくなっていく。
「……」
いやな音だ、とハルトはこの音への感想を決めた。
やがてガルーダがここだよと言わんばかりに嘴で示すのは、耳鼻科と書かれたフロアだった。
ただの耳鼻科。休憩中と書かれた立て札と、閂によってロックがかかった扉で入ることができなかった。
「ここ?」
少し顔を青くしながら、ハルトはガルーダに尋ねた。ガルーダは声を鳴らすことなく頷いた。だが、表情のないガルーダの動きから、只ならぬ事態が発生していると思えた。
同時に確信した。この奇妙な音は、ここが発生源だと。
ハルトは、勢いよく扉を開け、中に入る
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