第三章
[8]前話
そうして病院に行って診てもらうとだった。
「胃潰瘍ですね」
「癌でないですが」
「どうもなってもおかしくない風でしたが」
それがというのだ。
「それで済んでいます」
「そうですか」
「随分精神的にリラックスしてますか?」
医師は祖母に問うた。
「若しかして」
「いつも猫達と一緒にいます」
祖母は医師に答えた、孫はすぐ隣にいる。
「そうしています」
「アニマルヒーリングですね、それがありますから」
「リラックスしていてですか」
「かなりましになりまして」
癌になりそうなところがだ。
「それで済んでいます」
「そうですか」
「癌は潰瘍の酷いものの場合もあるんです」
医師はこうも話した。
「それでお祖母さんの場合は」
「それで済んでいますか」
「はい」
そうだというのだ。
「精神的にリラックスしていて、それもいつもですね」
「いつもあの子達と一緒にいますので」
猫達と、というのだ。
「それで」
「そうですね、ならです」
「これからもですか」
「猫ちゃん達と一緒にいて下さい、あと入院には及びませんが」
それでもとだ、医師はさらに話した。
「食事には気をつけて下さい」
「柔らかいものですか」
「お粥やお豆腐、プリンや牛乳を召し上がって下さい」
「わかりました」
祖母は医師の言葉に笑顔で頷いた、そうしてだった。
家に戻ると家族に事情を話した、すると祖父が祖母に言った。
「そうか、猫達と一緒にいるからな」
「いいみたい」
「それは何よりだな、癌はやっぱり怖いからな」
祖父は神妙な顔で言った。
「だからな」
「それでよね」
「胃潰瘍で済んでよかった」
「そうね」
「じゃあ暫く食べものには気をつけよう」
「そうするわね」
「しかし。本当にうちに猫達がいてよかったよ」
祖父はここでこうも言った。
「お陰で祖母ちゃんは癌にならずに済んだ」
「そうだよね、猫がいたら長生き出来るんだ」
孫も考える顔で言った。
「そうなんだね」
「そうだな、そのことがわかったな」
「そうだね」
「折角七十まで生きたし」
祖母がここでまた言った。
「それならね」
「これからもだね」
「ええ、生きないとね」
「じゃあこれからもだね」
「あの子達と一緒にいるわね」
「是非そうしていこうね」
孫は祖母に笑顔で応えた、そして実際にだった。
祖母は猫達と共にい続けた、そうして彼等と共に長生きした。常々自分が長生きしているのは猫達とお陰と言って。
優しいお婆さんと五匹の猫 完
2020・11・22
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