こんな接客あるのか!?
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でそういう考え方をしてしまったのかもしれません」
「そうなんだ……」
ハルトは、テレビのフラダリに視線を戻す。争いを嫌うライオンは、記者団の質問に何一つ答えないまま、病院前の車に乗車し、発信した。レポーターの『今回の問題に対し、病院の対応が待たれています』という言葉よりも、大きな病院の院長が一般的な普通自動車を使っている光景の方が印象に残った。
「問題って……昨日のことですよね?」
ハルトの問いに、青山さんは頷いた。
「患者の怪物騒ぎ。病院の患者さんが、トンボの怪物になって、看護婦一名重傷、街にも数人の被害が出て、今は行方不明」
「……」
本当はウィザードが討伐したのだが、それを言ったところで誰にも信じてもらえることはないだろう。ハルトは黙っていた。
「フラダリさんの、少し過激な性格もありますから、前々から訝しまれていたんです。この騒ぎも、それが原因といえるでしょう」
「……」
ハルトは、少し顔を下げる。
「可奈美ちゃん」
「ん?」
ハルトの声に、カウンター奥から、ラビットハウスの制服を着た可奈美が顔を出した。
「ごめん。ちょっと出てもいい?」
「え? いいけど……」
可奈美は戸惑いながら、店内を見渡す。午後一時。昼食時だというのに、会社員の姿はなく、青山さんのみがお客さんの状況。
可奈美は腕を組み、
「でも、万が一の時は、助けに来てもらわないと困るよ? 私も午後は出かけたいし……」
「ああ、午後には戻ってくるから。それじゃあ、お願い」
ハルトはそれだけ言い残して、そそくさと走り去っていった。
見滝原病院の駐車場にマシンウィンガーを停め、ハルトは院内へ急ぐ。
先日までとは打って変わり、病院には報道陣が大勢いた。患者や見舞客はむしろ少数派となっており、ロビーの片隅に縮こまっている。
受付で待つのももどかしく、ハルトはエレベーターに突撃する。最上階のボタンを押し、大急ぎでリフトアップ。
「クトリちゃん!」
子供たちの居住フロア。昨日、子供たちにマジックショーを披露したその場所だが、今はもぬけの殻だった。
「……」
いない。その現実を頭で理解した後で、ようやくハルトは深呼吸した。
「……何やってんだ俺。そもそも会ってどうしようって思ってるんだ?」
ハルトは顔を押さえる。
「ここは危ないから、どこかに避難しようって言うのか? ないないない。……みんな揃って外出か……うん。出直したほうがいいな」
ハルトはそう決めて、帰路に着こうとする。すると、「お兄ちゃん?」という声が聞こえた。
「どうしたの?」
七、八歳くらいの少年。眩い眼差しのチー君がこちらを見上げていた。
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