第1部 沐雨篇
第1章 士官学校
005 勝負事にこそ勝て
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、ついこないだまではやる気ゼロみたいなもんでしたからね。まぁ??」
??だからこそ、焚き付けたのだが。
フロルがヤンを釣った餌は簡単なものである。
ヤンが一番好きなもの、歴史学に関するフロル自身の蔵書であった。
フロルは小さい頃から、自分が置かれた時代を的確に把握するために好んでその手の本を読んだ。さらに、いつか出会うであろうヤンに対する取り引き材料として、その類の本を集めていた、という事情がある。
だがこれを知らぬ後世の歴史家は、不敗の魔術師ヤン・ウェンリーと、フロル・リシャールを列挙し比較するにあたって、<歴史好き>を挙げてみせたのはヤンにとっても、フロルにとっても複雑な心境を齎したであろう。彼自身は歴史を一つの物語として、読者として楽しんでいたにすぎず、対してヤンは歴史に対して学者としての視点として生涯研究対象として接していたからだ。よって、ヤンとフロルが共通の話題、歴史を通じて意気投合したという逸話は完全に後世の創作、いや、勘違いと言われるべきものであった。
フロルにとっては、歴史も、はたまた立体TVのアクション映画も、まったく同レベルのエンターテイメントにすぎなかったのである。
それはさておき、ヤンは釣れた。
銀河連邦史全集、旧地球史大全など、ヤンにとっては一度は読んでみたいと言った本を見せつけられては、やる気を出さざるを得なかった。どの本も、絶版本や今では需要がなくて出版されないような本であり、また電子媒体としても販売されていない本であったからである。国立図書館にすらおいてないような本すら、あった。そこらへんはフロルがフェザーンの悪友経由で手に入れたのだが、ヤンは知るべくもない。
もっとも、ワイドボーンと戦うにつれ、
「自分はとんでもない詐欺にあってるんじゃないだろうか」
という気がしていたという。
フロルはこの士官学校に入り、自身がこの戦術シミュレータ試験を受ける際に知ったことであるが、この試験の優勝とは勝ち抜き戦で決まるものではない。採点官が戦術指揮官に必要であると思われる資質や能力について、各項目採点付けし、総合点で判断するものである。それにはもちろん、自身が運用した艦隊の消耗率や敵艦隊の撃破率、戦術目標の達成率なども判断に加えられる。
謂わば誰に勝ったかよりも、どのように勝ったか、の方が大切なのである。
その点では、学年主席と対戦するというのは、悪いことばかりではない。
先述の通り、まともに艦隊運用もできない生徒相手では、こちらの手際を披露することもできない。であるならば、ある程度の運用をしてくれる生徒を相手取り、それを撃破すれば高得点が入りやすい、つまりは優勝しやすいのだ。
まぁ原作では、ヤンはワイドボーンに勝ったということだけで名が知れていたので、優勝する必要
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ