暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第58話:残された指輪
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 フィーネを追って本部最奥区画アビスへと1人乗り込んだ颯人。
 後を追ってきた彼を、フィーネは腕組して待ち構えていた。

「フン、ここまで追ってきたか。深追いしなければ今暫くは生き永らえたものを」
「悪いね。じっと待つってのが性に合わないのさ」

 侮蔑を含んだフィーネの言葉に、颯人は軽口で返す。しかし口調とは裏腹に、彼には微塵も油断は無かった。
 フィーネは弦十郎相手に、それなりに対抗できていた。彼女が琥珀や白のメイジと同程度であれば、僅かなぶつかり合いで勝負は決していた筈だ。つまり彼女は、少なくともジェネシスの幹部程度の実力はあると言う事。

 油断は禁物だ。

「そう言えば、お前には依然おちょくられた借りがあったな?」
「さて、何の事かな?」
「恍けるな。デュランダル移送作戦の時、風鳴 弦十郎に進言して勝手にデュランダルを持っていった事、忘れたとは言わせないぞ」

 殺気を伴ったフィーネの視線に、颯人は愉快そうな笑みを浮かべた。思えばあれはなかなかに上手く誰も彼をも出し抜けた。

「貴様、あの時から私の事を疑っていたな? でなければあそこまでやろうなどとは思うまい」
「ちょっと違うなぁ。その前からあんたの事は怪しいと思ってたよ」
「何だと?」
「覚えてない? 俺が最初に二課の司令室にお邪魔した時。あの時あんた、一瞬だけど洒落にならないくらいおっかない目を俺に向けてたんだよ?」

 元々は奏を驚かすつもりでこっそり司令室に潜り込んだあの時。颯人が魔法を使った瞬間、極僅かな時間だがフィーネは了子としての皮を被りながら颯人に警戒する視線を向けたのだ。2年前よりも確実に魔法使いとして厄介になった彼に、警戒すべきという認識を抱いてしまったのだ。

 その際に僅かに漏れ出た悪意を、颯人は敏感に察知していたのである。

「俺、こう見えて他人からの視線には敏感でね。そう言うのが分からないと、沢山の観客を満足させられないのさ」
「ご立派なプロ意識だな。だがその割には今まで私に対するアクションが少なかったようだが?」
「証拠も無しに動くほど俺も馬鹿じゃないよ。それに、俺が何かしなくてもおっちゃんが探ってたみたいだし」

 策を弄するのは彼も得意としているが、流石に情報面までは手が回らない。餅は餅屋、ここは弦十郎達に任せるのが得策と、颯人はあまり表立って動くようなことはしないでおいたのだ。下手に動いてフィーネの警戒心を煽るようなことになっては元も子もない。

 そこまで話して、颯人は雰囲気をガラリと変えた。先程までは奏の幼馴染であり手品師としての颯人として佇んでいたが、今は違う。
 ここに居るのは、1人の魔法使いとしての颯人だった。

「さて……」
〈ドライバーオン、プリーズ〉
「お喋りはここまでにし
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