第壱話「コマイヌとネコマタ」
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「ラートム……」
辺りはしんと静まり返り、風が塵を巻き上げ吹き抜ける。
ふう、と一つ息を吐き、ハクジは炭しか残っていない焔ビトの亡骸を見つめた。
──その直後だった。
「がああああああああああああぁぁぁッ!!」
頭上からの気配に振り返るハクジ。
そこには、もう一体の焔ビトが迫っていた。
「先輩ッ!!」
「しまっ……ッ!?」
ホオズキの頭上から落下してくる焔ビトの巨体。
間に合わせなければ……ハクジが飛び込もうとした、その時──
ハクジのすぐ側をすり抜け、一人の影が飛び出した。
「はぁッ!!」
聞き覚えのある声に目を凝らすと、細長く伸びた緋色の炎が見えた。
猫耳と二又の尻尾のような緋色の炎を放つタマキが、ホオズキを抱えて飛び退いた。
焔ビトは着地し、地面がひび割れる。
しかし、獲物を逃した事で隙が生じたのは見て取れた。
「興梠、今のうちにッ!祈りは私がッ!」
「ッ!ああ!」
「すまない、助かった!」
ハクジは体勢を崩した焔ビトへと向け、腕を十字に組む。
ホオズキは立ち上がると、再び合掌した。
「炎ハ魂ノ息吹……黒煙ハ魂ノ解放……灰ハ灰トシテ……其ノ魂ヨ……炎炎ノ炎ニ帰セ」
立ち上がった焔ビトは、ハクジの方へ向かって突き進む。
しかし、ハクジは怯むことなく、ただ冷静に焔ビトが距離を詰めてくれるのを待ち続ける。
「うおおおおおおおおおおおおッ!!」
そして次の瞬間、組まれた腕から十文字を描き、勢いよく放たれる炎。
裂帛の叫びと共に放たれたそれは、焔ビトの胸部を貫き、コアを吹き飛ばした。
「ぎゃあああああああああぁぁぁ……!!」
「ラートム……」
崩れ落ちる焔ビト。
その亡骸から炎は消え去り、黒炭へと還った。
「古達ちゃん……ごめん、助かった!」
「バカ興梠!私が来なかったら、今頃どうなっていた事か!」
「うっ……返す言葉もございません……」
開口一番に飛んできたお説教。
中隊長にバレたら怒られる……と、ハクジは冷や汗を流した。
「いや、狛司だけの責任ではない。先輩でありながら、警戒を怠った俺にも非がある……」
「いえ、鬼灯さんは悪くありません。いきなり頭上から」
「しかし……」
「まあまあ鬼灯ぃ!ここは二人っきりにしてやろうぜ!」
「ッ!?烈火中隊長!?」
突然肩を組まれ、驚く鬼灯。
烈火は声を潜め、鬼灯に耳打ちする。
「環は狛司に話したい事があるらしいんだ。俺達はちょっと邪魔だって事だな☆」
「な、なるほど……」
「じゃ、俺達はしばらく席を外すぜ!後は若い2人でごゆっくりなっ☆」
「れ、烈火中隊長!?ちょっと言い方に語弊がありませんかぁ!?」
何やらたタマキ
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