第壱話「コマイヌとネコマタ」
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地面を蹴ると……四つん這いで走り出した。
直後、その両腕と頭上に炎が灯る。
まるで犬耳と前足のような形のそれは、さながら一匹の猟犬が獲物を追う姿を彷彿とさせる。
いや、彼の言葉通りなら『狛犬』と言うべきだろう。
この世界には、焔ビトの他に「能力者」と呼ばれる者達が存在する。
炎を操る力を有し、焔ビトと戦う事が出来る能力者は、その多くが特殊消防隊に所属しており、日夜戦っているのだ。
ホオズキは特定の条件下で炎を操れる『第二世代能力者』。自ら炎を発生させる事は出来ないが、特化型の能力を持つことが多い能力者に分類される。
そしてハクジは自らの体から炎を発し、また、その炎を操り攻撃手段に応用する事が出来る『第三世代能力者』だ。
「居た!」
壁を蹴り、壁を走り、障害物を飛び越えて、路地裏を走り抜けたハクジは、遂に焔ビトを発見する。
「がああああああああああ!!」
まるで地獄の悪鬼のような……あるいは、苦痛に満ちた悲鳴のような咆哮が轟く。
全身が炭化し、全身から炎を噴き上げながらなお動くそれは、ほんの少し前まで生きた人間だった誰かだ。
「熱いよな……苦しいよな……。今、眠らせてやる!」
「がああああああああああああぁぁぁッ!!」
目の前に現れたハクジを見るなり、焔ビトはこちらへと向かってくる。
ハクジは焔ビトに向かい合い、真っ赤に燃える両手を構えた。
「があああああああッ!!」
振り下ろされた腕を躱し、横に振るわれた腕を避け、真っ直ぐに突き出された受け流す。
「ぐうううううッ!?」
「うおおおおおおおッ!」
攻撃を受け流した事で生まれた隙を突き、焔ビトの顔へと拳を叩き込む。
焔ビトがバランスを崩した所で、ホオズキが到着した。
「がああああああああッ!?」
「ハクジッ!」
「先輩!鎮魂の祈りを!」
「ああ、頼んだッ!」
ホオズキは胸の前で手を組むと、鎮魂の祈りを唱え始める。
「炎ハ魂ノ息吹……」
ハクジは握った右手を広げ、焔ビトの方へと向ける。
「黒煙ハ魂ノ解放……」
掌の中心を焔ビトの心臓部……コアの存在する場所へと向け、狙いを定めて意識を集中。
「灰ハ灰トシテ 其ノ魂ヨ……」
炎が掌へと集まり、野球ボール程の大きさの球体型を形成する。
そしてハクジは、その炎を──
「炎炎ノ炎ニ帰セ」
真っ直ぐ、一直線に解き放った。
「ぎゃあああああああああぁぁぁ……!!」
焔ビトのコアが一撃で消し飛び、胸のど真ん中に風穴が空く。
コアを失った焔ビトは、それ以上活動を続ける事ができない。崩れ落ちていく焔ビトに向けて、ハクジは合掌した。
その魂が、どうか安らかに眠れるように……。
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