第壱話「コマイヌとネコマタ」
[5/9]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
れ本気か?」
「へ?」
先輩の言葉の意図が解らず、思わず聞き返す。
「いや、あれだけ毎日のように環ちゃんの事触っといて、何か思う所とかないのか?」
「何言ってるんですか先輩。嫁入り前の女の子にあんな事してしまうなんて、俺には申し訳なくて仕方ないですよ。土下座でも詫び足りないです」
「はあ……まあ、それはそうだが……」
先輩は苦笑いすると、珈琲を一口啜った。
俺は何かおかしな事を言っただろうか?
俺なんかの不幸に、あんないい子を巻き込んでるんだ。申し訳ないに決まってるじゃないか。
「狛司。正直なところ、お前は環ちゃんの事をどう思ってるんだ?」
「そりゃあ、いい子だと思ってますよ。真面目で、明るくて、気立てもいい。俺は嫌われてるのでツンツンされてますが、バーンズ大隊長や烈火中隊長達には尊敬の目を向けて懐いてる姿なんか、まるで猫みたいで可愛いいじゃないですか」
「いやいや、嫌われてるなんて事ないと思うぞ?俺には随分と仲が良さそうに見えるが?」
「そんなわけないですよ。会う度にガン飛ばされてるじゃないですか」
「まあ、確かにそうだが……」
先輩は顎に手を当てると、目を細めて俺を見る。
「付き合いたい、とか思った事はないのか?」
その言葉に、一瞬だけ息が詰まったような気がした。
「いえ……そんな事は」
「そうか?」
「俺なんかには勿体ないですよ。それに……俺じゃ彼女も不幸にしてしまう。現に、毎日ああですから……」
「……そうか」
それだけ言うと、先輩は再びノートPCに目を戻した。
──その時だった。
ジリリリリリ、と激しい鐘の音が鳴り響く。
「出動警鐘ッ!?」
「焔ビトか。行くぞ!」
危機を告げる鐘の音が、俺達の脚を先走らせる。
消防服に袖を通し、俺は所定の車庫へと向かった。
?
『焔ビトは3体。各隊は手分けして捜索し、速やかに鎮魂せよ!』
「了解!」
中隊長カリムの指示に従い、ハクジとホオズキは現場の路地裏へと突入する。
「ホオズキ先輩、位置は?」
「待ってろ。今見つける」
ホオズキはそう言うと懐から一葉、緑色の栞を取り出す。
そこにマッチで火を付けると、栞と同じ緑色の炎が上がった。
栞を燃やして発生した炎を、ホオズキは頭上へと投げる。
すると炎は四方に飛び散り、そしてホオズキの目には徘徊する焔ビトの姿が浮かんだ。
「見つけた。南南西の方角、距離200」
「了解!」
ハクジはホオズキに言われた方向を向くと、クラウチングスタートの体勢を取る。
「残り2体は他の隊が当たるはずだが、鉢合わせる可能性もある。警戒はしておけよ」
「分かってますよ。行くぜ、“コマイヌ”ッ!」
そう言ってハクジは
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ