第壱話「コマイヌとネコマタ」
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そう言った。
「訓練校どころか、子供の頃から変わってませんよ。俺の“不幸体質”は」
そう。俺、狛司興梠には、生まれついて備わったとんでもない体質が備わっている。
それは、自他共に認める程にアンラッキー……即ち『不幸』である事。
まず、一日に平均5回はバナナの皮や空き缶などで派手に転んでいる。
塗装中の建物の前を通ると頭上からペンキの入ったバケツが落下してくるし、頭上にハトがいる電線は避けて通らないと頭に糞が落ちてくる。
通行人にぶつかり特売で買った卵が全部ダメになった事もあれば、書き終えたレポートに足を滑らせた友人が差し入れのコーヒーをぶちまけた事もあったかな……。
酷い時には、何も無いところで突然頭に金ダライが降ってくる、なんて事まであるくらいだ。
これが幼少期の頃からずっと続いており、周囲からの哀れみの目がちょっと痛い。
太陽神様は何故このような事を……と天を仰いだ日も数知れない。
俺自身、この体質がある人生にすっかり慣れてしまったような気がしている。
だからこそ、「慣れる事は恐ろしい」と俺は胸を張って言えるのだ。かっこよくはないけどな。
「その不幸体質と同等クラスの人間がいるんだから、世界はまだまだ広いものだ」
「古達ちゃんには、本当に申し訳ないと思ってます……。入隊してから毎日のように迷惑をかけてしまって……」
環古達。第一に入隊して以来、俺の悩みの種とも言える存在だ。
俺と同じ日に入隊してきた彼女だが、何の因果か、彼女も俺と似たような体質を備えてしまっていたのだ。
それこそが、“ラッキースケベられ”である。
彼女は事ある毎に、周囲の男性に対して何らかのラッキースケベを誘発させてしまうのである。
例えば、転んだ拍子にすぐ近くにいた男性消防官の顔へと、その豊満な果実を押し付けてしまったり。
例えば、廊下の角でぶつかった拍子に、下着が丸見えになってしまったり。
例えば、すれ違っただけなのに何故かスカートが手に引っかかって脱げ落ちたり……。
取り敢えず、彼女のラッキースケベられに常識は通用しない。それくらい有り得ない状況で、ラッキースケベさせてしまうのだ。
そして、運の悪い事にその体質は、俺の不幸体質と共鳴してしまったらしく……俺が入隊して以降、古達ちゃんのラッキースケベられに一番遭遇しているのは、なんとこの俺なのである。
俺と古達ちゃんが同じ場所に揃うと、彼女のラッキースケベられは全て俺に集中するらしく、事実そうだという観測結果を入隊から3日の間に先輩が統計してしまった。
俺の不幸もここまで来たか、と肩を落としたのが記憶に新しい。
正直言って、こればかりは一番慣れちゃいけない不幸だと心の底から思った。
「……お前、そ
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