第壱話「コマイヌとネコマタ」
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瞳に星が浮かんでいる暑苦しい雰囲気の溢れる男……烈火 星宮だけが、隣の2人とかなり温度差のあるテンションで拳を握る。
彼ら3人こそ、この第1特殊消防隊を支える“中隊長”を担う者達である。
「カリム、烈火、あの二人は君らの隊なのでしょう?中隊長として、何とか言ってやるべきなのでは?」
「無理だな」
「ああ!無理だぜ!」
フォイェンの言葉を、2人はバッサリと切り捨てる。
「即答ですか……」
「ああ!環のラッキースケベられを止められるのは、俺くらいだからなっ☆」
「正直なところ、あの二人は一緒に居た方が被害の拡散を防げる。狛司の不幸体質は、環のラッキースケベられを集中させるからな。マイナスとマイナスを掛ければ、マイナスにはならねぇ」
2人を預かるカリムと烈火の言葉に、フォイェンは溜息を吐く。
「なるほど……。何と言いましょうか……どうかあの二人に、太陽神の加護が在らんことを。ラートム」
フォイェンは苦笑いしながら、ホオズキに引きずられて行くタマキとハクジに向かい、手を合わせるのだった。
?
「それで、もう第一には慣れたか?」
向かい合ったデスクに座り、ホオズキ先輩は俺にそう尋ねた。
「まあ、少しは……」
「いつまでも訓練校気分じゃないんだ。とっとと慣れろ」
「そうは言いますけど、ここって聖陽教の色が強いじゃないですか。他とは雰囲気が違うというか、緊迫してると言うより厳かすぎて肩が強ばるというか……」
ホオズキ先輩の首から下がる十字架を、そして俺の制服の襟元に輝く十文字を交互に見て呟く。
聖陽教。それはこの国の国教であり、太陽を神と崇める一大宗教。
この第一特殊消防隊は、聖陽教との繋がりが強い。3人の中隊長は全員が神父であり、俺達一般隊員の制服もツナギではなく、神父服や巫女服となっている所がそれを顕著に表している。
庁舎の前には聖陽オベリスクが立っているし、聖堂の大きさも考えると、庁舎というよりまるで教会そのものだ。
なので、どうにも気が抜けないのである。
神の御前でダラける事など出来ようものか。
「俺達第一は、太陽神様を深く信仰する隊長達の元に集った、選ばれし精鋭だ。その自覚が出来た頃には、その緊張も苦ではなくなるさ」
「んー、慣れって恐ろしいですね……」
慣れるといつの間にか当たり前になって、慣れる前に感じていたものが薄れてしまう。
辛い訓練も難しい職務も、慣れればそうではなくなっていく。
だけど、慣れる事は決していい事とは限らない。
それは、俺がこの17年の人生で誰より学んだ事だ。
「慣れると言えば、お前のアンラッキーっぷりは訓練校の頃から変わってないな」
ふと、先輩が半ば呆れたような笑みで
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