第壱話「コマイヌとネコマタ」
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太陽暦佰九拾八年。
世界は、世界地図が描き変わるほどのとある大災害を境に始まった、人体発火現象による脅威に怯えていた。
突然、人が生きたまま発火し、自我を失い命尽きるまで周囲を焼き尽くす「焔ビト」となってしまうのだ。
国は人々を炎の恐怖から守り、人体発火現象の原因と解決策を究明するべく、「特殊消防隊」を結成。この驚異の対応に当たらせている。
人間の最も多い死因が焼死となったこの世界で、彼ら消防官は日々、人々の希望として戦っているのである。
これは、そんな特殊消防隊に所属した若者達の物語──
?
東京皇国、新宿区。
国内に8つ存在する庁舎の中で最も大きな聖堂を有する、特殊消防隊のエリート部隊……第一特殊消防隊。
そこでは今日も、いつ何時発生するか分からない人体発火現象に備え、訓練する隊員達や、神に向けて熱心に祈りを捧げる聖職者達が行き来していた。
そして、厳かな雰囲気漂うその中で……とある消防官が悲鳴を上げていた。
「待ぁぁぁてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!こんにゃろおおおおおおおおお!」
顔を真っ赤にした黒髪ツインテールの女性消防官が、頭頂にアホ毛の生えた黒髪の男性消防官を追いかけている。
「すみませんすみませんすーみーまーせぇぇぇぇぇん!!ごめんなさぁぁぁぁぁい!!」
一方、彼女に追い回されている男性消防官は、何度も謝罪しながら、庁舎の廊下を全力疾走していた。
「今日こそは逃がさねぇぞ!このラッキースケベ野郎!!」
「原因はお前の“ラッキースケベられ”だろうが!だぁーもう、不幸だぁぁぁぁぁ!!」
疾風の如く駆け抜けていく2人を、他の消防官やシスター達は面白半分、呆れ半分と言った表情で見守っている。
そんな2人の行先に、肩まである茶髪を後ろで縛り、眼鏡をかけた消防官が、額に青筋を浮かべて立ち塞がった。
「お前ら!廊下を走るんじゃあないッ!!」
「げっ、鬼灯先輩ッ!?」
まるで鬼のような形相で立ち塞がる先輩に怖気付き、男性消防官は慌てて立ち止まろうとする。
ところが、それが悲劇の引き金だった。
足を止めようとした男性消防官の足元に、ちょうど壁から剥がれ落ちてしまったポスターが飛来し、彼はそれを思いっきり踏んずけてしまったのだ。
「どわあああああっ!?」
絶叫を上げ、天井を見上げながら派手にすっ転ぶ男性消防官。
彼の悲鳴と転んで背中を打つ音が、廊下に響き渡る。
だが、そこへ更なる悲劇が到来した。
「どうぇええええええええッ!?」
なんと、彼がコケたことで同じく足を止めようとした女性消防官が、足を引っかけ躓いたのである。
「おっととととととととと、と、と、と……わあああッ!?」
バランスを崩し
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