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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第52話 軍と家族
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た時、ウィッティを高級副官に任命したのだろう。フォークの凶刃さえ防げていれば、原作でも指折りのキャラになっていただろうが、それは今言うべきことではない。俺はしばらく無言で何も映っていない天井を見つめた後、少しばかりの諦めを含めてウィッティに言った。

「いい上官か? クブルスリー少将閣下は」
「そうだな。ヴィクが歳を取れば、ああいうふうになるんだろうなと考えるくらいには、いい上官だと思うよ」

 俺の問いに、ウィッティは照れくさそうに肩を竦めて応えてくれた。





 ウィッティが司令部から作戦本部へ帰って行ったあと、殆ど入れ違いで戻ってきた爺様に俺はクブルスリー少将からの伝言を告げた。果たして爺様はオフィスチェアにどっかりと腰を下ろすと、司令官室内に響き渡るような大きな溜息をついて
「言い訳だけでも伝えてくれるんじゃから、まぁクブルスリーにしては上出来じゃな」
 などと皮肉ぽく呟いた後、不在としている者も含め司令部全員に今日は早上がりするように、と命じた。司令官室から退出する際、こっそりと振り返ると爺様は座ったまま腕を組んで額にしわを寄せたまま天井を見つめていた。

 いずれにしても許可ある早上がりは滅多にないので、ファイフェルには充分睡眠をとっておけよと伝え、俺はグレゴリー叔父の官舎へと向かった。自分の官舎……というよりは中級幹部向けの、前世時代におけるやや広めのマンションの一室に帰ったところで寝るだけなので、たまには家族の顔を見たくなっただけであって、決して夕食をご馳走になろうと思ったわけではないのだが……

「ヴィク兄ちゃんに私の士官学校受験について、お父さんやお母さんの説得を手伝ってほしいんだけど」

 今年一二歳のイロナと九歳のラリサの即席家庭教師をした挙句、レーナ叔母さんには強制的に夕飯の席に付けさせられ、一五歳になったアントニナから夕食後『学校生活の面で』相談があると言われて、ノコノコとガレージの裏側についていったら、それが罠だった。

「……」
「一月の早期卒業は認めてくれなかった。軍籍に入ることをお母さんは絶対反対。お父さんも直接は言わないけれど反対してるんだ」

 確かに原作でもユリアンが早期卒業制度の話をヤンにしてたような気がする。アントニナはユリアンとは違い家庭的にも財産的にも恵まれている。少なくとも将来を軍に担保しなければならないような状況ではない。ボロディン家は同盟開闢とは言わないまでも、長く続く軍人家系として世間ではそれなりに知られている。ボロディン家に生まれた男子の七割以上が軍人になっているし、女性の軍人も少なくない。そして戦死者・戦傷者・行方不明者もそれなりにいる。

「お母さんは自分だって軍人だったのに、僕には軍人になってはいけないって言うなんて、矛盾してておかしい
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