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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第52話 軍と家族
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かって声を投げつけた。
「マーロヴィアでのご活躍は統合作戦本部戦略部でも高く評判で、少佐殿のお噂はかねがね耳に親しんでおります!」
「やめて!」
「フェザーンでの一件についてもぜひ詳細をお伺いいたしたく、フョードル=ウィッティ大尉、本日まかり越しました!」
「いい加減、やめろよ!」

 俺が気恥ずかしさからたまらず声を上げると、ウィッティは笑って手を放し、拳を握りしめて伸ばしてきたので、俺も同じように伸ばして拳をこつんと突き合せた。

「なんか相変わらず元気そうで何よりだ。我が高級副官殿」
「人事に行った同期から、お前がフェザーンからマーロヴィアに飛ばされたって話が流れて、同期みんな真っ青だったぜ。期の首席の本部長昇格が絶望的だから、うちらの代は冷や飯喰いになるかもってな」
「そいつは、皆に悪いことしたな……」
「それでもハイネセンに戻ってこれたんだからもう大丈夫さ。でもすぐに出るんだろ?」
「さぁな」
「作戦の出どころが統合作戦本部戦略部だから機密は気にしなくていい。もっとも戦略的には添え物扱いの作戦ではあるけどな」

 チラッと横目でコーヒーを持ってきたブライトウェル嬢を見て小さく肩を竦め、応接の机の上に並べられる間だけ口を閉じ、彼女がキッチンに消えると皿ごと手に取って、コーヒーの芳香に鼻を向ける。

「あの子、噂じゃこの司令部で随分と大事にしてもらっているそうじゃないか」
「俺がケリムの第七七警備艦隊にいた三年前、彼女にはずいぶんと世話になったからね」
 俺がそう答えると、ウィッティの眉間に小さく皺が寄る。
「ヴィクはホントに女を見る目がないな。フェザーンの一件も女がらみって聞いてるぞ」
「そんなことまで知りたがるとは戦略部も相当暇なんだな」
「まさか。相変わらず間抜けでお人よしかどうか確認しに来たんだよ。成長してないって言うべきかな?」

 そう言うとウィッティは俺の目の前で一気にコーヒーを喉へと流し込んだ。その顔には七割の安堵と二割の好奇心と……一割の警戒感が浮かんでいる。おそらく戦略部の何処かが余計な心配をして、同室同期であるウィッティに探りに行かせた、というところだろうか。

「心配しなくていい。司令部内の士気は高い。そう心配性の人に伝えておいてくれ」
「わかった。出動は四月頭って聞いている。時間があればそれまでに同期連中集めて飯でも食べようや」
「時間ね。どこかに売ってないもんかな」
「わかる。わかるぞ、ヴィク。キャゼルヌ先輩の結婚式の招待状、お前のところにも来たか? なんで二月下旬にするかな。戦略部が糞忙しくなる時期を見計らってるとしか思えない」
「おそらく糞忙しくなるから、だ」

 キャゼルヌは皮肉っぽいが優れた軍政家であり、その情報網も情報部ほどではないにしろ後方に張り巡ら
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