邂逅編
第2話 交流と迫る不穏
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市民の生活水準と衛生環境は向上していた。
「我が国の食料生産率は格段に向上し、近年ではこの世界に存在しなかった作物の栽培と既存作物のブランド化によって利益も得やすくなっている。まさに我が国にとって嬉しい事ばかりだが…」
イーネはそう呟きながら、不安げな表情で西の方角に目を向けた。
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クワ・トイネ公国西部 地方都市ギム
ギム郊外にある公国陸軍の演習場。そこでは数両の装甲車両が砂煙を立てながら荒れ地を爆走し、数キロ先に設けられた的に向けて機銃を撃っていた。
当初、クワ・トイネ公国は日本側に対して軍事支援を取り付けようとしたが、下手に兵器輸出を行って紛争を引き起こし、国民からの顰蹙を買うリスクを恐れた日本政府に拒否され、替わって外貨獲得手段の確保を急いでいた台湾や韓国から、小火器や装甲車両を購入する事となった。
「訓練が行き届いているな。日頃からの成果か」
演習場の一角にある本陣で、公国陸軍西部方面師団司令のノウ・クワ・エジェイ将軍はそう呟きながら、騎兵に対する機動迎撃戦術訓練の様子を見つめる。
技術水準は元より自分達の使う戦術にて日本や台湾と大きな隔たりがあるため、小銃や機関銃は自衛隊に台湾軍、韓国軍も使っている現行モデルだが、車両は基本的に台湾陸軍や韓国陸軍が予備装備として保管していた中古のM113装甲兵員輸送車や、エンジンにパワーパックをブラックボックス化した上で装甲を簡素化したCM21装甲兵員輸送車のモンキーモデルで、重火器も81ミリ迫撃砲か84ミリ無反動砲が最大で、自衛隊や台湾軍に比べると貧弱に見えたが、4年前は銃や大砲どころか火薬すら知らなかった国としては随分と発展した方である。
海軍の方も近代化が進められ、現在は台湾がライセンス生産していた120ミリ重迫撃砲やT65・155ミリ榴弾砲を無理やり艦載化した艦砲で武装した装甲艦8隻と、掃海艇をベースに、30ミリチェーンガンや84ミリ無反動砲で武装した哨戒艇16隻を主体とする沿岸警備に特化したものとなり、空軍も台湾の漢翔航空工業が日本から輸入したターボファンエンジンに換装したAT-3〈自強〉の攻撃機型を16機輸入し、質的な向上を果たしている。
だが海軍は未だに航海用以外のレーダーを得られていない事が、空軍は高性能レーダーを備えた早期警戒機を有していない事が欠点として浮き彫りになっており、もし持てたとしても電子工学に関する知識を持つ者が少ないため、果たして実戦でどこまで戦えるのか、不安要素が付きまとっていた。
それはこの西部方面を預かる将の1人である、ギム守備隊隊長のモイジ一等佐官も有している不安であり、彼は上官のノウに対して説明する。
彼はクイラ王国を出身地とする獣人族とヒト族のハーフで、狗人族
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