邂逅編
第2話 交流と迫る不穏
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西暦2029年/中央暦1639年3月15日 日本国東部 東宝諸島 柘榴島
4年前、日本最東端の島であった南鳥島の東部沖合にて発見された陸地は、その後の調査で九州並みの総面積を持つ諸島である事が判明。さらに鉄や銅はもとよりボーキサイトやマンガン、ニッケルにクロム、リチウムなどの日本では産出されない金属やレアメタルが産出されたため、東の地にある宝の意味を込めて『東宝諸島』と名付けられた。
そして東宝諸島の本島である柘榴島では、露天掘りによるボーキサイトの採掘と、輸出のための移送が盛んに行われていた。
「しっかし、掘れば掘る程に出てくるなぁ。3年前まではアルミの値段が金や銀よりも高かったのが嘘みたいだ」
柘榴島で一番大きなボーキサイト鉱山にある事務所で、岩崎マテリアルの社員はそう言いながら、港湾部へ露天掘りで採掘したボーキサイトを運ぶ長大なベルトコンベアを見つめる。
この島々の発見と開発によって、日本は一先ず金属資源の不足が解消され、同時にクワ・トイネ公国南部の国であるクイラ王国との国交締結により、石油や、東宝諸島では産出されないレアメタル・レアアースも確保できる様になった。結果、これまで資源輸入国であった日本は、金属やレアメタルの部門において輸出国へとなったのだった。
最も、社員の言う通り、この3年前に当たる、転移直後の1年間は、新規のボーキサイトが手に入らなくなってしまったため、暫し缶で売られる飲料の値段は高くなり、瓶の価値が見直される事となったのだが。
「そう言えば、今ここでは造船所とか工業地帯の整備が進められてるけどよ、そこの労働者はどうするんだ?」
「そこは国内に残っている旧世界の外国人で賄うそうだ。というよりも、観光やらビジネスで来てた外国人への経済的な援助が馬鹿みたいに金がかかるんで、必要最低限の生活費はここで稼いでほしいってのが、政府の本音みたいだな」
転移前に世界中で流行していた新型ウィルスによる被害で一度は落ち込んだものの、その後の4年近くにも及ぶ観光業界の復興により、年間1000万人近くの外国人観光客がこの国を訪れる様になっていた。しかし転移により国内には200万人近くの居留外国人が取り残され、政府は転移の影響で職を失った失業者と併せて、彼らの支援に苦慮する事となった。
そんな時、東宝諸島の発見や、クワ・トイネ公国との国交締結が、これらの問題解決の糸口を指し示した。日本人の失業者はODAに関わる国家公務員ないし非営利活動法人の職員として募集し、近代的な農業技術や生活インフラを広めるためにクワ・トイネ公国へ派遣。マイハーク港の近代化や鉄道路線の整備にて職を与え、一方で外国人は東宝諸島へ送り、鉱山の開発と経営、工業地帯に都市の建設・整備で生活費を得る機会を設けた。
そして
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