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どんな困難も
第四章

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「ハヤシライスはなかったし出る時に尻餅ついて」
「今もだね」
「百円玉落とすし」
 その百円玉を拾いつつ言う。
「やっぱり私ってね」
「運がないっていうんだね」
「ええ、困るわ」
「ううん、ずっと見ていたけれど」
 それでもとだ、一文字は駅の切符コーナーで項垂れる亜希に話した。
「亜希ちゃんって確かに色々よくないことが起こるけれど」
「やっぱりそうよね」
「けれどね」
「けれど?」
「その起こることはね」
 不幸はというのだ。
「どれも嫌なことだけれど」
「それでもなの」
「命に関わることあったかな」
「そういえば」
 それはとだ、亜希も答えた。
「そうしたことは」
「なかったね」
「車に跳ねられたりとかは」
 そうしたことはというのだ。
「あと大きな病気になったことも」
「ないね」
「お財布全部落としたりすられたりとかも」 
 こうしたこともというのだ。
「なかったしこけてもね」
「怪我したかな」
「なかったわ」
 そうしたこともというのだ。
「一度も」
「多分ね」
「多分?」
「亜希ちゃんは運がなくても」
 このことは事実でもというのだ。
「ある程度でね」
「それでなの」
「うん、大きな不幸には遭わない」
「そうなの」
「そうじゃないかな」
 こう亜希に言うのだった。
「若しかして」
「そうかしら」
「今度占ってもらって確かめてみたらいいよ」
「それじゃあね」
 亜希は一文字のその言葉に頷いた、そうしてだった。
 実際に二人で電車に乗って一緒にそれぞれの家の最寄りの駅まで下りた。二人が住んでいる場所は町は違うが最寄りの駅は同じなのだ。
 丁度その駅の傍に易者がいた、その易者に占ってもらうとだった。易者は亜希に対してこう言った。
「確かに運はないですが」
「それでもですか」
「不運は些細な出来事にです」
 その様にというのだ。
「なる様になっていますね」
「そうですか」
「はい、ですから色々あっても」
 それでもというのだ、今日のデートの時の様に。
「大変なことにはならないので」
「だからですか」
「安心して下さい」
「そうなんですね」
「おみくじはいつも大凶とのことですが」
 このことは亜希自身が話した。
「それで色々あってもです」
「大きなことにはですね」
「些細です、七難八苦があっても」
 易者は不幸をこうも表現した。
「それでもです」
「大きなものにはならなくて」
「怪我も大きなトラブルもなく」
 そうしてというのだ。
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